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投稿:院長 |
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スポーツを観戦して感動したり、元気をもらって生きる力になったりすることが多いです。 最近は、アメリカ大リーグのドジャースの試合が連日BSで放送されるようになり、大谷翔平選手をはじめ日本人選手の活躍が話題になることが多くなりました。 特に今年のワールドシリーズは、私が観た野球の試合の中でも1〜2位を争うようなドラマチックな展開となりました。 Sさんは、進行がんの患者さんで、食欲が落ち、ベットで横になって過ごすことが多くなってきました。 痛みなどの苦痛に対して、麻薬などの症状を緩和する薬剤が欠かせず、最近ではせん妄も出現したり、症状が不安定になってきました。 しかし、ドジャースの試合を観戦することが大好きで、試合中は苦痛を忘れたかのように夢中になってテレビを観ていました。 ある日、Sさんを訪問した時のことです。 その日はワールドシリーズ第3戦で、大谷翔平選手がホームラン2本を打って4安打の大活躍を見せていました。しかし、試合は延長戦に入り、どちらが勝つのかSさんはベットに横になったまま固唾をのんでテレビにくぎ付けになっていました。 私は、Sさんの邪魔にならないように、最近の様子は奥さんから聞き取るようにして、薬の調整をすることにしました。 診察が終わって部屋を出るとき、「今日の試合でドジャースが勝ったら、Sさんは元気100倍になるでしょうね!」と奥さんに声をかけて自宅を後にしました。 診療が終わって、後で試合結果を確認すると、延長18回裏にフリーマン選手がホームランを打ってドジャースが劇的なサヨナラ勝ちを収めたことを知りました。 「18回も闘って最後に負けなくて良かった〜」 その後も、まるで高校野球の試合を観ているかのようなドラマチックな試合が続き、山本由伸選手の大活躍もあって、4勝3敗でドジャースが見事に2年連続でワールドチャンピオンに輝きました。 ドジャースが優勝した瞬間、真っ先にSさんのことが頭を過りました。 「Sさん、本当によかったですね。おめでとうございます!」 それにしても、ドジャースの試合は、勝つときは手に汗を握るような薄氷の勝利で感動的なのですが、負けるときは中継ぎ投手が大乱調で大量失点し、あっけなく負けてしまうのが特徴です。 これは、きっと「勝ち目のない戦いでは深追いせず、無駄な労力を費やして大きな精神的なダメージを被る前に潔く見切りをつけ、次の行動に移しやすい」ということなのかもしれないと、ポジティブに捉えることにしています。 こう考えると、大敗は後で感動を呼ぶためのお膳立てなのかもしれませんね。 派手に転んでも、医者の手を借りずに?絶対にただでは起きないドジャースの今後の戦いぶりに目が離せません。 |
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2025年11月11日(火) |
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第394話 身近に感じるノーベル賞 |
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投稿:院長 |
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今月、スウェーデンのカロリンスカ研究所よりノーベル賞受賞者が発表され、日本から生理学・医学賞には、坂口志文さん(大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任教授)と、化学賞には北川進さん(京都大学副学長)さんが選ばれました。おめでとうございます! ノーベル賞受賞者に共通するのは、時には批判を浴びたり、孤立しながらも揺るがぬ信念に基づいて問題を追求し続けた粘り強さ、忍耐力とだと思います。日本人としてとても誇らしいです。 ノーベル賞は、人類の営みに対して多大な貢献をした研究者に贈られる賞です。 お二人の研究も、これからの臨床や地球環境に多大な恩恵をもたらすのではないかと期待されています。 やまと在宅診療所あゆみ仙台でも、ノーベル賞の恩恵を感じられることが度々あります。 今から遡ること10年前に大村智さん(北里大学特別栄誉教授)がノーベル医学生理学賞を受賞されましたが。大村先生は、様々な寄生虫に対して高い有効性を示すイベルメクチンという薬剤を開発しました。当時、アフリカを中心とする地域で多発していた寄生虫病オンコセルカ症やフィラリア症(象皮症)に対して、北里研究所から何億という人々にイベルメクチンが無償供与された結果、一部に地域ではオンコセルカ症の撲滅を達成するなど、この地域の医療に対して多大な貢献をされました。 先日、当院が担当するGさんの診察をしていた時、ご家族より「便から虫が出てきました」とスマートフォンで撮影された1枚の写真を見せられました。そこには便に混じって白いミミズのような線虫(回虫)と思われる寄生虫が写っていました。実は、医師になってからこのような寄生虫を見るのは初めてで、とてもびっくりしましたが、その瞬間、私の中には大村先生の名前と顔が頭に浮かびました。 早速、商品名「ストロメクトール」として流通しているイベルメクチンをこの患者さんに処方して、1週間の期間を置いて2回服用してもらったところ、それ以降、この寄生虫の排泄がピタリとなくなってしまったのでした。 さらに、それ以前には、ある老人施設で疥癬(かいせん)という寄生虫の皮膚症状が流行った時、昔はあらゆる手段を使っても駆除に苦労していたこの寄生虫が、イベルメクチンをたった数回服用するだけですっかり完治してしまったので、それ以来、イベルメクチンは私の中では絶対忘れられない薬剤の一つになりました。 一方、日本を代表する作家・村上春樹さんが、今年もノーベル文学賞に選ばれませんでした。 私をはじめとする一部の大ファンにとってどうして受賞できないのか?「腹の虫が収まらない」という残念な結果となりましたが、イベルメクチンを通して発展途上国の多くの人々の命とやまと在宅診療所あゆみ仙台の患者さんを救った大村先生の偉大な業績を身近に感じて、心の慰めにしているところです。 |
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2025年10月31日(金) |
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第393話 総合診療 |
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投稿:院長 |
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今月、プラモデル制作で有名なプロモデラーによる講演会が仙台で開催されることを知り参加してきました。 この講演会には、宮城県や遠くは関東からプラモデルを趣味とする「オタク」が自作したプラモデルと持ち寄って集まり、それぞれの自慢の作品について添削・指導を受けたり、製作上の悩みについて相談に乘ってもらう企画があります。 私は、日本でよく知られている船や宇宙船のプラモデルばかりを作っていますが、その中から、今年6月から制作を開始し、今も悪戦苦闘して未だに完成していないアメリカ海軍の戦艦ミズーリを持っていくことにしました。 戦艦ミズーリと言えば、1945年9月2日に東京湾に停泊していたミズーリの甲板で行われた日本の降伏文書調印式です。日本側は重光葵外務大臣らが全権代表として出席し、連合国側はマッカーサー元帥などの代表者が降伏文書に署名し、太平洋戦争が正式に終結しました。 この戦艦ミズーリのプラモデルは、数十年前にタミヤから発売されたとても古いキットなのですが、当時の最新の考証に基づいた正確な設計が反映され、各パーツが丁寧に造形されており、製作していると「モノづくり日本」を随所に感じられる、そんな素晴らしさを感じました。 せっかく作るのだから、できるだけ正確にきれいに作りたいという気持ちになり、このプラモデルに他社から発売されているエッチングパーツという細かい金属を加工して接着したり、専用の工具を使って各パーツごとに塗装していくことになりますが、このプロセスがとても難しく、きれいに・・・という気持ちが強くなればなるほど、泥沼にハマってさらに時間がかかってしまうことになりました。 それでも講演会の当日は早朝4時に起床して、開始時刻ギリギリまで制作したところ、未完成ながらもなんとか形になり、丁寧に段ボールで梱包し、まるで生まれたての赤ちゃんを大切に抱っこするように会場に運びました。 会場では、私のような船のモデルは少数でしたが、それぞれの参加者の工夫が随所に見られて目の保養になりました。 プロモデラーによる添削・指導では、細かい造形の失敗には目をつむって下さり?甲板の細かい塗装の塗り分けについて、お褒めの言葉をいただき、少年のような気持になってモチベーションがさらに高まりました。 講演会で驚かされたのは、プロモデラーの豊富な経験と知識です。 プラモデルはガンダムやフィギュア、戦車、車、軍艦をはじめとする船、宇宙船など多岐にわたりますが、参加者のどんな質問や悩みに対しても実用的で的確な答えが返ってくるのでとても勉強になりました。 まさにプラモデルの総合診療!もちろん、私の疑問や悩みも無事に解決。 総合診療は私の医師としてのライフワークになっていますが、プラモデルを通して信頼される仕事の取組み方について考えるよい機会にもなりました。 ところで、私がプラモデルにハマればハマるほど完成品を安全にどの場所に置くのか問題が発生しています。 自宅では家族に煙たがられ、職場に持ち込んでも職員の増員によりスペースが確保できなくなり、事務長に「持って帰ってください」と言われる始末・・・。 現在、来たる総理大臣の指名選挙に向けて各党入り乱れた政策協議が続いていますが、我が家でも「安全保障」と「難民対策」について取り組みが必要なようです。 |
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2025年10月17日(金) |
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第392話 約束 |
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投稿:院長 |
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当院の患者さんは、これまで波乱に満ちた人生を歩んできた方が少なくありません。 80代のKさんもそんな一人で、若い時はヤクザの道に手を染め、犯罪を犯して収監されたことがあるそうです。 犯罪の内容は、恐喝?暴行?詐欺それとも・・・。(聞くのが怖い) Kさんは物静かでいつも淡々と話をされる方ですが、犯罪の内容を話したがりません。 しかし、刑期が懲役1年と聞いて、固唾をのんで聞いていた私は安堵したのでした。 若かりし頃のKさんを救ったのは裁判官です。 Kさんに判決を言い渡す時、温情溢れる言葉でKさんに語りかけ、2度と同じ過ちを犯さないようにKさんを優しく諭したそうです。 きっと裁判官は、裁判に臨むKさんの姿を見て、この人物ならば絶対に更生できると信じたに違いありません。 1年の刑期を無事に終えたKさんは、晴れて出所することになりますが、その後は裁判官との約束を守り、極道の道ときっぱりと決別し、更生の道を歩み続けました。 そして現在、熟年婚で結ばれた奥さんの介護を受けながら幸せな結婚生活を送っています。 賑やかでよく喋る奥さんと物静かなKさん。 対照的なカップルですが、2人から醸し出される話題は事欠きません。 ある日、奥さんが外出する際に、Kさんに飼い猫のエサを渡して、猫がKさんの布団に潜り込んできたら食べさせるように伝えておいたそうです ところが、腹を空かしていたKさんは、なんと猫のエサを食べてしまって、奥さんに怒られてしまったのでした。 裁判官との約束を守っても、猫のエサを“ネコババ”して、奥さんとの約束を破ってしまったKさん。奥さんから下される判決はいかに? |
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2025年10月12日(日) |
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第391話 幸せの・・・ |
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投稿:院長 |
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Sさんは80代の男性です。1年前に食欲や体力の低下があり、訪問診療を受けることになりました。 今まで投与を受けていた種々の薬剤の調整を行ったところ、少しずつ食欲が戻り、この暑い夏も元気に過ごされました。 Sさんはとても温厚でいつもニコニコと診察に応じてくれる優しい方ですが、昔は付き合いなどで夜遅くなり、家族に心配をかけたことがあったそうです。 一方の奥さんは、とても明るくてハキハキとした方です。 そんなSさんですが、昔の負い目があるのか、自宅では完全に奥さんが主導権を握り、奥さんには頭が上がらないようです。 その雰囲気がとても微笑ましく、診察ではいつも私と奥さんの間で明るい言葉が飛び交い、賑やかな雰囲気で診察が進みます。Sさんは、その言葉にニコニコと耳を澄まして聞いています。 Sさんがここまで元気を取り戻した理由として、父思いで父の健康管理には少し厳しく接している娘さんの献身的な介護や、訪問看護師やデイサービスをはじめとするスタッフの思いやりに溢れたケアが欠かせません。 ある日の診察でのやりとりです。 私「Sさんは、いつも幸せそうですね」 奥さん「そうでしょ〜先生!そうなの、こんなに幸せな人はいないわね!」 私「Sさんの身体はいろいろな人のケアが行き届いていて、皮膚のトラブルがあっても、必ず良くなりますもんね」 奥さん「そうすると、この人の身体は、いろんな人の思いやりが詰まった塊(かたまり)なのね!」 私「Sさんを見ていると、男性は歳を取ったら威張り散らすのではなく、奥さんの尻に敷かれているほうがよっぽど幸せに暮らせそうですね。なんたってSさんは、幸せの塊ですから!」 ということで、Sさんは皆の想いが詰まった希望の星・・・ではなく、「希望の塊」と認定されることになりました。 Sさん、皆の想いを背負うことはとても責任重大です!今よりももっと幸せになりましょう! |
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2025年9月30日(火) |
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第390話 世界陸上 |
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投稿:院長 |
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Mさんは、進行がんと診断された80代の男性です。 有効な治療方法がなく、余命宣告を受けたMさんは、身の回りのことを整理するために一刻も早く奥さんの待つ我が家へ帰りたいと強く希望されました。 帰宅後のMさんは、慢性的な腸閉塞のため、食事をとることができませんが、腸の浮腫を和らげる点滴を受けながら、日中はシャワーを浴びたり、リビングで過ごすなど静かでゆったりとした時間を過ごされました。 Mさんが、自宅で穏やかな時間を過ごすことができたのは、奥さんの包み込むような温かさと献身的な介護の賜物です。今まで家族のために尽くしてくれたMさんに少しでも恩返ししたい・・・。そんな気持ちで、訪問看護のサポートを受けながら、慣れない坐薬の挿入でもすぐにできるようになり、Mさんを支え続けました。 Mさんは陸上競技を観戦することが大好きで、9月13日に東京で開幕する世界陸上を心待ちにしていました。それを聞いた私は、宮城県出身で男子200mに出場する鵜沢飛羽(うざわとわ)選手、女子マラソンの佐藤早也伽(さとうさやか)選手ことを紹介しました。 Mさんの残された体力を考えると、世界陸上の開幕まで命を繋ぐことができるのかぎりぎりのタイミングでした。 そして、9月13日に世界陸上が開幕しました。Mさんは、男子35q競歩で日本人第一号となる銅メダルを獲得したことよりも、心待ちにしていた男子200mと女子マラソンがまだ始まらないことをとてもがっかりされていたそうです。 その後は、次第に意識が遠のき、ベッドで眠っている時間が増えてきました。そして、200mの予選で鵜沢飛羽選手が力走し、日本人で唯一準決勝に進出したのを見届けるかのように、奥さんに見守られながら、Mさんは静かに人生のゴールを迎えられました。 Mさん、奥さん、短い時間でしたが、いつも温かく私たちを迎えて下さりありがとうございました。Mさんの人として尊厳ある姿は金メダル級でした。 鵜沢飛羽選手、佐藤早也伽選手は、彼、彼女を応援するいろいろな人の想いを背負って、これからも力強く走り続けるでしょう! がんばれニッポン! |
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2025年9月20日(土) |
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第389話 老衰の条件 |
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投稿:院長 |
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80代の男性Yさんは、進行がんと診断され在宅医療を受けることになりました。 しばらくは、病気を感じさせないほど元気で、毎日30分以上散歩をしたり、囲碁仲間と定期的に対局するなど、びっくりするくらいにエネルギッシュに過ごされていました。 私たちの前では、いつもニコニコしながら「今は元気でも、そのうち弱ってきてコロッと逝きますから」と全く動じることがなく、診察ではいつも和やかな雰囲気です。 しかし、病気は確実に進行し、次第に食欲が低下し、歩くことも困難になってきました。 そして今、ベット上に寝たきりのなったYさんは、体重が落ちて痩せてしまったものの、ニコニコして和やかに診察を受ける様子に変わりがありません。 ある日の診察での会話です。Yさんは、10月に誕生日を迎えることになっています。 Yさん「弟は80歳に老衰で亡くなったので、自分も老衰を希望します」 私「そんなにニコニコして冗談が言えるんだから、とても老衰には見えないですよ〜。でもYさんのために老衰ということにしておこうかな?」 Yさん「はい、それでお願いします」 私「あっ、忘れていたんですが、老衰に認定する前にやることがあります。10月の誕生日には奥さん自慢のチーズケーキを食べましょう!」(Yさんの奥さんはお菓子作りの名人なのです!) Yさん「あと1か月も持つかな〜?」 私(ベットの脇に置いてあるキャラメルコーンとユンケル黄帝液を指して)「これを食べたり飲んだりしているんだから、まだ老衰と言わないですよ」 Yさん「それは困るな〜」 私「でも、次の誕生日を迎えたら、Yさんのために老衰ということでサービスしておきますね」 Y「それじゃあ、老衰になれるように頑張ろうかな〜」 私「はい、頑張りましょう!」 ということで、Yさんは、10月の“老衰のお祝い”にチーズケーキを食べることが目標になりました。 Yさん、目標に向かって一緒に頑張りましょう! 🎵ハッピ老衰デー・トゥーユー🎵 |
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2025年9月8日(月) |
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第388話 100歳は何色? |
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投稿:院長 |
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Uさんは、当院の開院当初から診療している数少ない大正生まれの女性です。 年齢を重ねて、便通異常、関節痛、腰痛、視力障害、聴力障害、睡眠障害など、数々の身体の不調に悩まされてきました。 また、診察を始めてから、新型コロナウイルス感染症、転倒・・・など幾度の病気やケガを経験しました。 しかし、Uさんはその都度、逞しくピンチを乗り越えるというのではなく、持ち前の温厚な性格で柔軟に通り過ぎて来たと言ってよいでしょう。 Uさんは、性格だけでなく、表情、口調、しぐさのすべて穏やかで、Uさんの周りにいると時間がゆったりと流れているかのようです。 そんなUさんですが、このたび、めでたく100歳の誕生日を迎えることになりました。 おめでとうございます!Uさん! ちなみに、1925年生まれの有名人を調べてみたところ、作家の三島由紀夫さん、落語家の初代の林家三平さん、指揮者のポール・モーリアさん、英国政治家のマーガレット・サッチャーさんだそうです。歴史を感じますね。また、物理学者でノーベル賞受賞者の江崎玲於奈さんは、Uさんと同じく今もご存命です! 先日、誕生日の翌週にUさんのご自宅を訪問した際、ショートステイ先から贈られたという色紙を見せて頂きました。そして、そこには過去のイベントで撮影されたUさんの写真とメッセージが載せられていました。 どの写真の表情も診察で見せて下さるような柔和な笑顔で溢れていました。 Uさんは、困難なことがあっても、それを包み込んで調和してしまうような不思議な力を持っているのです。そして、それが長寿の秘訣なのですね。 ただそこにいてくれるだけありがたい、と無条件に思えるUさんの存在は、周りの人を温か〜い気持ちにさせるのです。 ところで、99歳を白寿と言いますが、100歳は何色でしょう? それは、お祝いムード一色! |
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2025年8月23日(土) |
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第387話 体重が増えた原因とは? |
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投稿:院長 |
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80代のHさんは、脳梗塞の後遺症で身体が不自由なため、老人施設で介護を受けながら過ごされています。心臓の弁に異常があり、油断すると心不全を起こしやすいので普段から体重が増えないように気を使っています。 先日、参議院選挙と仙台市長選が隔週で開かれ、Hさんは期日前投票のため、親族が同伴して外出されてきたそうです。 その数日後、Hさんの健康管理をしている訪問看護ステーションより、「Hさんの体重が急激に増え始め、むくみが悪化している」と連絡が入り、急遽往診することになりました。 Hさんは、普段は物静かな方ですが、その日の診察では、投票した候補者が無事に当選したこと、日本の政治の在り方についてとても熱く語ってくださいました。 日本の選挙では、選挙に無関心な有権者も多く、投票率がなかなか上がらないことが問題になったりしますが、Hさんのように長年、日本を支えてきて下さった高齢者が、今もなお日本の行く末を案じていることに同じ日本人として感謝しなくてはいけないと思いました。 その後、Hさんに体重が増加した心当たりについてそっとお聞きしました。すると、久しぶりの外出を満喫されたそうで、お茶漬けなどの食料品を買い込んで、施設から提供されている食事と一緒に食べ始めたことを恥ずかしそうに告白して下さいました。 選挙では一人しか選べないのですが、「何を選ぼうかな?」と買い物を大いに楽しまれたのですね〜。 そして、Hさんに対して改めて食事の注意点について説明し、一時的に利尿剤を増やして経過観察することになりました。 ということで、この日は、普段は見ることができない熱〜いHさんと、“お茶目な”Hさんの両方に触れることができてとても新鮮な気分でした。 ところでHさん、選挙に行っても体重は定数に収めていきましょうね! |
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2025年8月12日(火) |
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第386話 アニマルセラピー |
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投稿:院長 |
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90代のSさんは、息子さんと二人暮らしをしています。 日中、息子さんは仕事に出ており、一人で留守番をしていますが、全然寂しい思いをしたことがなく、部屋の中はとても賑やかなのです。 何故か? それは、昔から猫を飼っていて、筋金入りの猫の愛好家だからなのです。 自宅のあちこちに猫が描かれたグッズが置いてあり、まるでメルヘンの世界のようで見ているだけで楽しくなるのです。 壁掛け、絨毯、ハンカチ、枕、テーブルクロス、湯飲み、マグカップはもちろん、なんと窓枠にも猫の彫刻があるのです! そんなSさんも、最近は身体の衰えを感じるようになり、足のセルフケアが困難になってきました。 そこで、私のほうで足の爪切りを受け持つことになり、ニッパーとやすりを取り出して、Sさんの靴下を脱がせようとした時、靴下にも何匹もの猫が刺繍されていることに気か付きました。 「あっ、ここにも猫が!(笑)」 それはまるで、Sさんの足元で楽しく遊んでいた猫が私に話し掛けてくるかのようです。 吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも靴下に描かれてニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで初めて医者というものを見た。しかもあとで聞くとそれは人間中で一番口うるさい種族であったそうだ。この医者というのは我々のご主人様を捕つかまえて爪を切るという話である。しかし、最初は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。ただ彼の手でスーと引っ張られてご主人様の足から脱がされて何だかフワフワした感じがするではないか。おいそこの医者!何をするのだ!早くご主人様の足元に戻して遊ばせろ! ということで、爪切りが終わった後は、この靴下をSさんの足にやさしく戻しておきました。 これぞ、Sさん流アニマルセラピー! |
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2025年8月2日(土) |