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第376話 早く退院したい理由とは? |
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投稿:院長 |
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Aさんは、ちょっぴり難聴ですが、笑い声がチャーミングでとても朗らかな小柄な女性です。訪問診療では、いつもかわいいパジャマ姿で私たちを迎えて下さいます。 先日、ある病気のために入院となりましたが、結局、食べることができなくなり、高カロリー輸液の点滴を受けたまま退院となりました。 Aさんが退院した日の午後、ご自宅に訪問診療に伺ったのですが、いつものように椅子に座って大音量で音楽番組をニコニコと視聴されており、そのパジャマ姿は退院前の様子と全く変わりませんでした。 食べることができなくなり、さぞかし気落ちしているのではないかと思ったのですが、もともとAさんは、食事に対する欲求がとても少ない方で、栄養補助食品のドリンク剤を組み合わせてなんとか食生活を送っていたほどなので、気落ちしているどころか、無事に退院してほっと一安心されたようでした。 ご家族に入院中のAさんの様子をお聞きすると、症状が落ち着いてからは、一刻も早く退院したいと退院日を心待ちにしていたそうです。そして、その理由が、自宅でのあるノルマをこなすためだったのです。 そのノルマとは・・・・・「自分で予約登録したテレビの番組を観ること」だったのです! 入院当日まで録画を終えていた番組がなんと数百!にのぼっていたそうで、ため込んだ番組を観ようと気合を入れていた矢先に入院となってしまったのでした。 気持ちを入れ替え、入院中にいつもの大音量でテレビを観ようとしたところ、他の患者さんから苦情が寄せられてしまい、不完全燃焼のまま入院生活を送ることになってしまったのです。 Aさんは、とにかく歌謡番組が大好きで、退院当日に私たちが訪問した日も、昭和の懐メロが玄関先に流れてきました。 それは、まるでAさんの退院を祝うかのようでした。 高齢者では、食事以外に、心の支えになるもの、楽しく生きがいを感じられるもの、やりたいと感じられるものがとっても大切なのですね。 それでは、退院当日にAさんのご自宅で聴いた懐かしい「セーラー服と機関銃」の替え歌「パジャマ姿と予約中」をお楽しみ下さい(ブログではメロディーが流れないのが残念・・・)。 リモコンは予約の道具じゃなくて♪♪ ふたたび観るための近い約束♪♪ 歌のある場所に♪♪ 未練残しても♪♪ 心寒いだけさ〜♪♪ このまま何時間でも♪♪ 観ていていたいけど♪♪ ただこのまま何百回でも♪♪ 予約したいけど〜♪♪ Aさん、この調子で年末の紅白歌合戦の予約をしてみませんか! |
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2025年4月21日(月) |
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第375話 日本人らしさ |
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投稿:院長 |
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歳を取ると、若い時にはなかったような様々な症状が出てくるようになります。 目がかすむ、関節が痛い、腰が痛い、足がしびれる、眠れない、手が震える、耳が聞こえない、耳鳴りがする、尿が漏れる、夜間に何回もトイレに起きる・・・など数えたらきりがありません。 症状が和らぐように工夫を凝らしますが、なかなか全てを解決することは難しく、上手に付き合っていかなくてはいけない場合が少なくありません。 80代の女性Mさんもそんな一人で、長年自由が利かない自分の身体と付き合ってきましたが、どことなくユーモアのある方です。 ある日の診察で私がMさんに労いの言葉をかけたときのことです。 私「Mさんは、いつも頑張っていらっしゃいますね」 Mさん「私は、これ以上頑張りたくありません」 私(思案しながら)「Mさんは、いつも努力をしていらっしゃいますね」 Mさん「私は、努力は嫌いです」 私(思案しながら)「それでは・・・いろいろ大変なことがあったと思いますが、長い間、日本人らしく自分の体調と謙虚に向き合ってきたんですね。ご苦労様です」 Mさん「どれはどうもありがとう」 私(内心ホッとしながら)「日本人は嫌いと言われなくて良かった〜」 Mさんとのやり取りは、いつもこんな調子で、どんな声掛けをしたら良いのか医者としての技量が試されます。 一般的に、日本人らしさとは、「まじめである」、「勤勉である」「秩序を好む」、「和を重んじる」、「礼儀正しい」、「情を重んじる」、「思いやりがある」、「誠実である」、「謙虚である」、「おもてなしの心がある」などがあげられると思いますが(過去には日本人らしさが失われ、進むべき道を誤った歴史もありますが・・・)、少なくとも私は、両親のもとで日本人に生まれ育ったことを誇りに感じているので、日本人らしいと感じる多くの患者さんには、素直な気持ちで「日本人らしいですね!」と声掛けしてみようかと思っています。 これから時代が変わり日本人らしさの定義も価値観も次第に変化するのかもしれませんが、先人から受け継がれてきた日本人としての美徳が失われたりしないことを祈るばかりです。 ちなみに、あるアンケートで、日本人で良かったと思える理由の1位は、高齢者が「四季の移り変わりがあること」で、若者が「食事がおいしいこと」だそうです。 高齢者は自然を楽しみ、若者は食を楽しむというわけです。 将来、若者が高齢者になる頃には、「日本人らしく食通ですね!」と声掛けすることが多くなるのかもしれませんね。 |
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2025年4月12日(土) |
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第374話 別れの季節2 |
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投稿:院長 |
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ある日、Sさんのご自宅を訪問した時のことです。 Sさんは庭に犬を飼育されており、私たちが訪問すると吠えてくるので、いつも忍び足で玄関に出入りするようにしていました。ところが、どんなに気配を消そうとしても必ず吠えられるので、犬を苦手にしている職員はSさんのご自宅を訪問できずにいるほどでした。 実はこの犬、今年で17歳(人間に例えるなら76歳)になる老犬で、白内障で目は白く濁り、声はしわがれて力がなくなってきており、老衰が徐々に忍び寄っていたようでした。 つい2週間前に訪問した時には、私たちの存在に気付くのが遅れたのですが、Sさんに「怪しい人物が侵入してきている」ことを教えるため精一杯吠えてきたので、番犬としての役割を必死に果たそうとしているのだと感じました。 ところがこの日は、いつものように吠えてこないので、犬小屋をこっそりと覗いてみると犬はそこにはいませんでした。 Sさんに事情をお聞きすると、今月、食事が喉を通らなくなり亡くなってしまったとのことでした。Sさんにとって赤ちゃんの頃から大事に育ててきた家族のような存在で、犬との出会いから亡くなるまでの思い出を涙ながらに語ってくださいました。 高齢者を数多く診察している私は、この老犬に愛着を感じていたので、主のいなくなった犬小屋を見て寂しさが込み上げてきました。 アニメのルパン三世と銭形警部は、泥棒とそれを追う警察という宿敵同士なのですが、ルパン三世は銭形警部を「とっつぁん」と呼んでいたように、互いに親近感や尊敬の念を抱くような宿敵を超えた関係だったように思います。 ということで、私にとってこの犬は、いつの間にか銭形警部のようなちょっと厄介ではあるけれど愛さずにはいられない存在になっていました。そして、Sさんのご自宅が仙台第一高校(通称、仙台一高)の近くにあることから、私は親しみを込めて“忠犬イチ公”と勝手に呼んでいました。 ルパン三世シリーズの不朽の名作「カリオストロの城」では、ある公国の姫(クラリス)を闇の世界から救出し、彼女の人生に光を与えたルパン三世との絆が描かれますが、アニメの最後で逃亡するルパンを追いかけながら、銭形警部がクラリスに話しかけた言葉が今も心に残っています。 「ヤツはとんでもないものを盗んでいきました……あなたの心です」 なんて素敵な言葉なのでしょう! これからも、イチ公が忠誠を誓っていたSさんの“信頼を盗む”ような診療を心がけていきたいです。 |
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2025年3月31日(月) |
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第373話 白菊 |
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投稿:院長 |
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今回は、今は亡きTさんの思い出について振り返りたいと思います。 Tさんは、がんの転移が判明して以降、徐々に体力が低下してく中でもそれを受け入れ、最期まで自分の意思を貫き通した方です。 Hさんの願いは、今までの人生でもそうであったように、少しでも社会に貢献することです。 Tさんは、東北大学の「白菊会」の会員です。白菊会とは、自分が亡くなった後に学生の解剖実習として献体を希望する一般の方々で構成されています。解剖とはその名の通り、学生が亡くなった方の体にメスを入れて、人体の組織の成り立ちについて詳細に観察する実習で、医学生の教育カリキュラムではなくてはならない実習になっています。 ある日、Tさんは私に問いかけました。 Tさん「私のような体を献体しても皆さんのお役に立てるものでしょうか?」 私「もちろんです。病気を持っていた方の場合、それが身体にどのような影響を与えていたのか詳細を確認することができます。Hさんのような尊い意志のある方が医学生の教育が支えているのです。役に立つどころか、私たち医療にかかわる人間はTさんの志に感謝しなくてはいけません」 それを聞いたTさんは安堵したようににっこりと微笑まれ、「それはとてもよかったです」と返答されました それ以降、Tさんは亡くなった後も社会に貢献できるという希望を心の支えにして精一杯自分の人生を生き抜きました。 Tさんをお看取りする際に奥さんから相談がありました。 それは、親族が献体に反対しているというものです。献体すると十分なお別れができないままご遺体が大学に引き取られ、数年間は家族のもとに戻らず、きちんと供養ができないというのがその理由でした。 私は、親族の方々にTさんが社会に貢献したいという強い遺志と、それを心の支えにここまで過ごしてきたことをお伝えし、大学への引き取りを数日間待っていただいて、最後は献体の了解をいただきました。 奥さんから感謝の言葉をいただいた時には、Tさんの最後の希望が叶えられようとしていることに安堵しました。 先日、東北大学医学部の学生が、当院で実習をした時のことです。 この日は、白菊会の会員であるOさんのご自宅を一緒の訪問することになりました。 学生は、Oさんが一人暮らしで体が不自由になりながらも、明るい表情で生活していることに感銘を受けたようでした。そして、これから医師になろうとする医学生の学業が、Oさんのような方々に支えられていることに対して学生と一緒にOさんに感謝の言葉を伝えました。 その言葉を聞いたOさんは、少しはにかみながらとても嬉しそうでした。その表情にあの時のTさんの表情が重なりました。 私が知っている白菊会の会員の方々は、たとえ幾多の苦難があっても悲壮感のようなものを表に出さず、一様に穏やかで爽やかな雰囲気を醸し出している理由がなんとなくわかった気がしました。 私の故郷、長岡市で8月に開催される長岡花火の冒頭に、戦争や震災でお亡くなりになった方々への慰霊の気持ちを込めて、3発の純白な大輪の尺玉花火「白菊」が打ち上げられます。 それは、Tさんが次世代に託した希望の光のように思えてなりません。 |
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2025年3月19日(水) |
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第372話 別れの季節 |
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投稿:院長 |
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3月1日、長男の高校の卒業式に出席してきました。 式では男子は主にスーツ、女子は主に袴を見事に着こなし、あれほど幼かった子供たちがいつの間にか立派な大人に成長した姿に感慨深いものを感じた親も多かったでしょう。 式では、形式すぎないように随所に工夫が凝らされ、生徒たちが誇りを持って母校を旅立っていく姿が感じられ、とても感動しました。 式が終了すると、それぞれの教室に移動して最後のホームルームを見学することができました。 私は、担任の先生とは初対面になりますが、まるで金八先生が現代に蘇ったような人柄で、目を何度もハンカチで拭いながら生徒たちに語り掛けました。 先生が生徒に最後に贈った言葉は「日日是好日(にちにちこれこうじつ」でした。 これは、これから長い人生、必ずしも順風満帆なことばかりでなく、時にはつらく悲しいことにも出会うかもしれないが、どんな日も自分にとってかけがえのない一日であり、1日1日を大切にして生きてほしいという願いが込められています。 情熱的に語りかける担任の先生に、人間味が散りばめられた温もりを感じることができ、長男はとても恵まれた環境で勉強していたんだな〜と感激しました。 そして、担任の先生から一人一人に卒業証書が渡されたあと、各人が担任の先生、クラスメート、両親に向けてスピーチしました。 各人が個性あふれる内容で、涙あり、笑いありのこれも感動的なものばかりで、教室の後ろで見守る親も、涙を浮かべながら聞き入っていました。 実は、私自身の高校の卒業式を思い出しても、恥ずかしながら担任の先生が何を話して下さったのか、どういう思いで卒業式に出席したのかまったく記憶がなく(記憶があるのは、卒業式の後、サッカー部の仲間と打ち上げをしたことだけ・・・)、今後は、「高校の卒業式の思い出」を聞かれたら、日日是好日のことを話そうかと思っています。 それにしても3月は別れの季節です。 別れには「悲しい別れ」と「喜ばしい別れ」がありますが、卒業式の別れは、寂しさはあるけれど、それぞれの夢に向かって次の人生の第一歩を踏み出す喜ばしい別れなのかもしれません。 わが診療所では、ご主人の転勤や出産で3月いっぱい退職となるドクターや女性職員がいます。 いずれも「夫についていく妻」「母としての妻」として、家庭円満があるからこその別れで、これも卒業式と一緒で、次のステップに進むための喜ばしい別れに違いなく、日日是好日の言葉を贈って温かく送り出そうと考えています。 そして、いつの日か人間としてさらに成長した姿(私の場合は老化した姿・・・)になって戻ってきてほしいと願わずにはいられません。 |
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2025年3月7日(金) |
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第371話 全自動 |
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投稿:院長 |
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身体が不自由な患者さんでも自宅で安心して生活するために、ご家族の献身的な介護が欠かせません。 80代の男性Iさんもその一人です。普段は奥さんと二人暮らしですが、時折、娘さんが自宅を訪問し介護を手伝ってくれています。 私たちがご自宅を訪問すると、Iさんはいつもソファーの定位置でくつろいでいますが、Iさんの頭のてっぺんから足の先までとてもきれいにケアされているのが一目でわかります。奥さんは、Iさんの身体の隅々まで知り尽くしているようです。 奥さん「先日、娘が来て耳の掃除をしてくれたんですよ」 Iさんの耳の穴を見てみると、確かにきれいで耳垢は全くありません。 私「そうすると、娘さんは上半身担当で奥さんが下半身担当なんですね!さすがに下(しも)のほうは、娘さんも恥ずかしいでしょうから」 奥さん(笑いながら)「あっちのほうは、昔お世話になったので大事に扱わなくちゃいけませんからね」 この言葉に皆で大爆笑。Iさんの奥さんはとても明るい方で会話が弾みます。 私「まるで全自動の丸洗い洗濯機のようですね。Iさんは座っているだけできれいになるんですね」 私「ところで夫婦喧嘩はするんですか?」 奥さん「はい、もちろんです。耳が遠くなってテレビの音がうるさいので静かにしてほしいです」 私「えっ、そうなんですね」 私「Iさん、奥さんの言うことに逆らわないほうがいいですよ。夜はテレビの音がうるさいと言われたら、静かに寝室に移動しましょう。下のほうを大事に扱ってもれなくなりますから」 Iさん(大笑いしながら)「はい、そうします」 どうやら夫婦円満の秘訣は、「耳が遠くなっても奥さんの声に耳を傾けること」、「下の世話を奥さんに任せておとなしくケアを受けること」のようです。 |
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2025年2月28日(金) |
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第370 ビフォー&アフター |
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投稿:院長 |
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今回は、前回記した「永遠の誓い」の続報です。 先日、Kさんの自宅を訪問診療に伺ったところ、ついにKさんの左手の薬指には結婚指輪が光り輝いているではありませんか! 私が「おお〜、きれいな結婚指輪ですね。あらためてご結婚おめでとうございます!」と声をかけると、Kさんはちょっぴり照れた表情を浮かべました。 台所には、買ってきたばかりの小エビが並んでおり、今日は奥さん自慢の中華料理を召し上がるそうです。 そういえば、結婚前は発熱したり、痛みが強かったり、食事が安定しなかったのですが、入籍してからは症状が安定し、少しずつ食事量も増えてきて、やせ細っていた顔もふっくらしてきました。 そして、Kさんの上半身には、かわいいミッキーマウスが描かれたトレーナーが着せられていました。 以前は、女子の香りのない華やかさとは全く無縁な生活を送っていたKさんですが、運命の女性と巡り合うと、こんなにも変わるものなのですね。 今日は、トレーナーの下に彫られているタトゥーも一層色鮮やかで、ミッキーマウスと左腕の龍の意外な組み合わせが見事に調和し、なんとも微笑ましいです。 私「今日は、龍も生き生きとして微笑んでいるみたいですね!」 奥さん「痩せると龍がしわだらけになってトカゲになってしまうので、しっかり食べさせます!」 Kさんと半世紀以上も人生を共にしていた龍が、再びトカゲになってしまわないように(結婚後のKさんの体調が竜頭蛇尾にならないように・・・)、皆でKさんを支えていきたいと思います。 |
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2025年2月22日(土) |
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第369話 永遠の誓い |
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投稿:院長 |
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2000年に入ってから熟年婚が増えているそうです(熟年離婚も・・・)。 80代のKさんもその一人で、長年、ある女性と同棲し、この女性から介護を受けてきましたが、ついに昨年末に入籍しました! そして、近々結婚指輪を買う予定になっています。 実は、Kさんは元ヤクザ。 若い時は、ずいぶんと波乱に満ちていたようですが、女性と出会った今は穏やかで心優しい男性です。 ということで、Kさんの胸や肩には今でも立派な入れ墨が残り、左手の薬指の先端は詰められてなくなっています(!)が、根元はかろうじて残っていました(よかった〜)。 左手の薬指は、神への聖なる誓いの指とされ、結婚指輪を左手の薬指につけることで、愛や絆を深めるという意味があるそうです。 Kさんは、極道の道から永遠に足を洗うことを誓い、そして、奥さんとの永遠の愛をここに誓っています。どうぞお幸せに! ところで、もし、誓いを破ったら指切りげんまん? |
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2025年2月7日(金) |
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第368話 殿堂 |
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投稿:院長 |
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メジャーリーグで活躍したイチローさんが、日本人で初のアメリカ野球殿堂入りを果たしました。 野球殿堂とは、野球で顕著な功績を残した人物に与えられる最大の栄誉で、過去にはベーブ・ルースなどそうそうたる野球選手が殿堂入りを果たしています。 野球の成績だけでなく、プロフェッショナリズムや品格、チームへの貢献度なども選考基準とされ、メジャーリーグで4256本の最多安打記録を持つピート・ローズ選手や762本の最多本塁打記録を持つバリー・ボンズ選手でさえ、野球賭博や薬物使用に関与したとされて殿堂入りを果たせませんでした。 メジャーリーグで10年以上プレーし、引退から5年が経過している元選手の中で候補者が選ばれ、全米野球記者協会に所属する記者の75%以上の得票を得ると殿堂入りを果たすことができます。 今回、2019年に引退したイチローさんが初めてその候補者入りし、野手で初となる満票での選出が期待されていましたが、得票率は99.7%(394人中393人!)とわずかに1票足りず、満票での選出を逃しました。しかし、殿堂入りしたイチローさんが初の記者会見で語ったことがとても印象的でした。 「振り返ると、あまりにも多くの出来事があった。いいことだけではなく、苦しいこともたくさんありました。最終的に一歩ずつここに近づき、この日を迎えられたことは言葉では言い表せないほどの気持ちです」 「1票足りないというのは、凄く良かったと思います。足りないものを補いようがないですけど、努力とかそういうことじゃないからね。いろんなことが足りない。人って。それを自分なりの完璧を追い求めて進んでいくのが人生だと思うんです。これとそれはまた別の話なんですけど、不完全であるというのはいいなって。生きていく上で不完全だから進もうとできるわけです。そういうことを改めて考えさせられるというか、見つめ合える。そこに向き合えるのは良かったなと思います」 イチローさんは、ウイットに富んだ様々な言葉を残してきましたが、人生必ずしも思うようにいかなくても前に進むための勇気やエネルギーを与えてくれる頼もしい言葉に違いないと感じました。 ところで、殿堂という言葉を聞くと、某ディスカウントストアのキャッチコピー「激安の殿堂」「驚安の殿堂」を思い出しますが、やまと在宅診療所が「思いやりの殿堂」になれるよう、イチローさんの言葉を胸に一生懸命に取り組んでいきたいと思います。 |
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2025年1月30日(木) |
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第367話 会いたい人 |
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投稿:院長 |
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Mさんは80代の女性です。 脳梗塞のため寝たきりになり、普段はすっかり無口になってしまったMさんですが、もともと明るくユーモアがあり、人とおしゃべりすることが大好きだったそうです。 そして、今もその一面が随所に溢れています。 お正月に、子供の頃からかわいがっていたお孫さんが帰省した時は、よほど嬉しかったのか、娘さんがびっくりするくらい陽気におしゃべりしたそうです。 Mさんはお酒も大好きで、特にワインが欠かせません。そしてチョコレートも大好物。 ある日の診察でご自宅を訪問すると、Mさんの額や頬が赤くなっていました。 娘さん曰く、「お酒を飲むとこのあたりが赤くなってしまうんです」 そして、よく見ると唇の周りにはチョコレートが付いているありませんか! Mさんは、診察前にチョコレートを肴に一杯やっていたんですね〜。 愛されキャラのMさんは、娘さんに額のあたりを撫でてもらうことが多く、どうやらこれも額が赤くなっている原因のようです。 深夜、Mさんが娘さんを呼ぶことがあるそうですが、ある日、要件が済んでから娘さんに向かって「次、お待ちしてま〜す」と一言。 これを聞いた娘さんは、どんなに些細な要件であってもMさんのことを怒ったりできないそうです。 さらに、Mさんは、寝言で亡くなったご主人の名前をしきりに呼ぶそうですが、ある日、娘さんが「お父さんに会いたいの?」とMさんに聞くと、Mさんは「まだ!」とだけ一言。 お正月が明けて、再び無口なMさんに戻ってしまいましたが、きっと、大好きなお孫さんと再会するまで、省エネモードになっているのかもしれません。 ということで、Mさんが天国のご主人と会う日はまだまだ先になりそうです。 天国のご主人は、にっこり微笑みながら「気長にお待ちしてま〜す」とつぶやいているかもしれませんね。 |
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2025年1月23日(木) |