やまと在宅診療所あゆみ仙台

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過去の院長ブログ

 第27話 生まれ変わったら・・・
投稿:星野

日本では、夫婦の3組に1組は離婚しているそうですが、離婚しなかった夫婦でも、長い関係の中で、パートナーに対していろいろな思いを持ちながら生活していると思います。

 

在宅医療では、夫を介護する妻から、夫に対する様々な評価が聞かれますが、けしてポジティブな言葉だけではありません。

 

酒とギャンブルでさんざん苦労させられたのね・・・。

言葉がきつくていつも泣かされていたのよ・・・。

今も召使のように使われて本当に大変なの・・・。

 

夫に対して複雑な思いを持ちながらも、夫婦としての関係を全うしようと懸命に介護を続ける女性には頭が下がる思いです。

 

ある女性が語っていた言葉が印象に残っています。

 

「夫には、生まれ変わっても一緒になろうと言われたけど、さんざん苦労をかけさせられたから、生まれ変わったら別な人生を歩みたいと思っているのよ」

 

長い介護がようやく終わった時に発せられた重みのある言葉です。

 

本当の愛情とは、相手を束縛したり、考えや生き方を一方的に押し付けたりすることではなく、相手に対して幸せになってほしいという気持ちから生まれるのではないかと思います。


自分に介護が必要になった時、「この人は家族のためにたくさん愛情を注いでくれたから、今度は私がこの人にお返しする番だね」と妻にに言ってもらえるような夫婦関係を築きたいものですね。

 

あっ、生まれ変わっても、再び夫婦になるかどうかはお互いの話し合いで・・・。


2019年1月30日(水)

 第26話  どちらを選びますか?
投稿:星野

勉強、教育、スポーツ、仕事など場面では、短所を克服するのか、長所を伸ばすのか、一体どちらの選択をするのか話題になります(まぁ、どちらもできるのならそれに越したことはありませんが)。

 

治療でも、異常を矯正するのか、正常な部分をさらに伸ばしていくのかという二つの選択肢がありますが、私自身は、若い患者さんに対しては前者の割合が大きくなるし、高齢の患者さんほど、後者の割合が多くなると考えています。

 

その理由として、高齢者ほど一つの問題を矯正しようとすると、正常だった他の部分に悪影響が出やすくなりますし、人生の後半に差し掛かって、欠点を矯正するばかりの治療では前向きになれないと思うからです。

 

さらに、ある研究では、弱点を克服するよりも強みを生かした方が人生に対して肯定的になり、幸福度が上がるという調査結果も出ています。


最近では、コメディアンの渡辺直美さんが、自分のふくよかさを前面に出して活躍していますし、CHAIという女性ロックバンドが、コンプレックスがあってもそれを長所と捉える楽曲を発表し、「ありのままの自分を好きになる」という新たな発想が共感を呼んでいます。

 

これからの時代は、「短所を矯正し克服する」、「長所を伸ばす」という今までの発想に加えて、「短所を長所と考える」という第3の発想が重要だと考えています。

 

忘れっぽくなった → 自分のことをきちんと自覚できる

神経質だ → 細かいところまで気が付く

頑固だ → 自分の意思をしっかりと持ち、ぶれない

老けてきた → 年齢を重ねて経験がある


こんな風に考えられたら、ちょっと気持ちが楽になりませんか?



2019年1月27日(日)

 第25話 あなたを大事に思っています
投稿:星野

在宅緩和治療で数多くのがん患者さんに関わってきましたが、私の身近にいる女性で最も発症してほしくないがん・・・・それは乳がんです。

 

それは、乳がんの罹患率のピークが40歳台後半、平均死亡年齢が約55歳という数値が示す通り、母として、妻として、キャリアウーマンとして、まだまだ活躍が期待される女性に発症し、発見が遅れると、時には10年以上の長い期間にわたり、徐々に身体のあちらこちらに転移して体を蝕んで行き、その心理的、身体的、経済的な負担たるや、筆舌に尽くしがたいものだからです。

 

そして、それを支える家族の苦悩も大変なものです。

 

乳がんは、日本人女性の11人に1人がその生涯に患うとされ、今も患者数は増加の一途をたどっていますが、検診(マンモグラフィー)の有効性が証明されているがんの一つでもあります。

 

しかし、残念ながら乳がん検診の受診率は半数に至りません。

 

その理由は、自分は大丈夫、忙しい、発見されるのが怖い、検査がうっとうしい・・・など様々だと思いますが、早期発見できた場合の負担と、発見が遅れた場合の負担はまさに天と地の差。


そこで私は、夫や身近にいる男性の後押しがとても大切だと思っています。

 

「乳がん検診、受けて来てみろよ」

 

普段はなかなか優しい言葉を掛けてあげられないという男性の皆さん、妻や身近にいる女性に向かって「あなたを大事に思っています」というさりげないメッセージを送ってみませんか?



2019年1月24日(木)

 第24話 インフルエンザを予防しよう!
投稿:星野

予想通りと言いますか、インフルエンザが流行しています。ワクチンは接種した株と流行株が一致していれば70%以上の予防効果が得られますが、一致していなければ予防効果は050%と悲惨な結果になり、予防接種を鵜呑みにしてはいけません。

 

インフルエンザは感染力が強く、予防対策がとても重要です。そこで、身近にできる予防方法をまとめてみました。

 

室温を22℃・湿度を50%に保つ

古い研究なのですが、この環境の中ではインフルエンザウイルスがほぼ不活化してしまうそうです。また、加湿することで気道の乾燥を抑え、繊毛の動きを促すことができます。

 

)マスクと手洗いをする

マスクは通常のフェイスマスクでも良いようです。ただし、手洗いを一緒にやることが重要。マスク自体は飛沫感染の予防効果は低いのですが、気道内の湿度を保つ効果が期待できますし、手洗いと一緒に行えば、接触感染の予防につながります。

 

3手指をアルコール消毒する

70%以上の消毒用アルコールは、インフルエンザウイルスを破壊する効果があり、手洗いと同様に接触感染予防になります。


緑茶を飲む

緑茶を135杯飲むとインフルエンザの発症率が半数近くになったという研究がありますが、こまめに飲むことが重要です。緑茶に含まれるカテキンとテアニンに予防効果があるそうですが、静岡のある小学校では、水道の蛇口からお茶が出てくるというからすごいものです。ちなみに、煎茶・番茶・玉露などは、どれも高濃度のカテキンを含有しています。

 

腸内環境を整える

最近話題の腸内フローラです。ある種の乳酸菌は、免疫細胞を活性化したり、インフルエンザに対する直接作用があり、マウスの実験でも確かめられています。

 

7時間以上の睡眠をとる

ある研究では、7時間以上睡眠をとっている人に比べて、睡眠時間が6時間未満だと風邪になる確率が4.2倍、5時間未満になると4.5倍にもなったそうです。インフルエンザの予防にも十分な睡眠が必要です。

 

人混みを避ける

お正月明けに学校が始まると途端にインフルエンザが流行するのですが、いかに人の交流を介して感染が広がるのかよくわかります。ちなみに、小学生の私の次男は、インフルエンザに罹って学校を休むんだと言って、風呂上がりに裸のまま過ごしていますが(どこで、この“民間逆療法”を覚えたのか不思議なんですが・・・)、希望を叶えるためには、まずは真面目に学校に行くことが大切だぞ〜。


果たして次男の目的は達せられるのでしょうか?

 

皆さんも、どうぞご自愛下さい。




2019年1月23日(水)

 第23話 添い寝の相手は?
投稿:星野

ある施設に入所しているおばあさんは、退院したばかりで、元気がなく食欲もありません。

 

そこで、施設スタッフは、施設に飾ってあった羽生結弦選手の実物大の写真を、この患者さんのベッドの脇に移動し横向きに置いてみたのでした。


このおばあさんは、大好きな羽生結弦選手が添い寝をしてくれるようになってから、みるみる元気を取り戻し、見事に食欲も回復したのですが、夜は興奮して(?)眠れなかったのだとか。


職員の粋な演出に拍手喝采。もちろん技の出来栄え点と演技構成点は満点。私の心の中では、たくさんのぬいぐるみのプーさんがベッドの中に投げ入れられたのでした。

 

ところで羽生選手・・・大会本番では横転せずに、素晴らしい演技を期待しています。



2019年1月21日(月)

 第22話 あなたに同意します!
投稿:星野

認知症を持つ高齢者の介護をしているご家族や施設職員から、「最近、怒りっぽくなったのですがどうしたらよいですか?」という相談を受けることがあります。

 

そんな時、相手の言っていることを否定せずに、肯定したり、共感する態度を示してほしいとアドバイスしています。

 

そんな時に使えるのが、共感言葉の『さしすせそ』です。

「さ」 さすがですね    尊敬の気持ちを示す

「し」 知りませんでした  関心の気持ちを示す

「す」 すごいですね 素敵ですね  感心の気持ちを示す

「せ」 せっかく〇〇したのに残念でしたね 同情の気持ちを示す

「そ」 そうですね そのとおりですね  同意の気持ちを示す

 

この言葉を場面や状況に応じて使い分けるのです。

 

2018年の流行語大賞と言えば、冬季オリンピックのカーリング女子チームが使った「そだねー」ですが、この言葉もまさしく同意の気持ちを示す言葉で、方言の親しみやすさもあって、多くの人々の共感を得ることが出来たのではないかと思います。

 

そして、この「そだねー」を「そ」の言葉として医療や介護の世界でも広まってほしいと秘かに考えています。

 

この考え方に共感する方は、是非「そだねー」とつぶやいてほしいなぁ。

 

ところで、「せ」は何て言葉だっけ?

 

せっかく覚えたのに、忘れてしまい残念でした・・・。


2019年1月18日(金)

 第21話 仕切り直し
投稿:星野

稀勢の里が引退するという報道がありました。

 

久しぶりの日本人出身の横綱として、患者さんの中でも最も人気のある力士でもありました。

 

私個人は、今まさに勢いのある若手力士よりも、年齢やケガと闘って奮闘しているベテラン力士を応援してしまいますが、その代表が稀勢の里でした。

 

横綱は力士の誰もが目指す地位ですが、横綱になることよりも、横綱になって背負うものは大きく、そこからがとても大変なのだということがよくわかりました。

 

今考えると、横綱という地位でなければ、連続休場の原因となったケガを悪化させてまで出場しなかったと思いますし、まだまだ現役でいられたのではないかと思うと残念な気がします。

 

日本人は何かと結果を急ぐ傾向があり、若い時からいい学校に合格する、いい会社に入るなどという目標を設定しがちですが、本来は、学校に入ったらどんなことを学ぶのか、就職したらどんな仕事をするのか、ということが目標であるべきで、もっと長い視野に立って目標を設定したり、周囲も温かくそれを見守る“懐の深さ”が必要です。

 

なにはともあれ、稀勢の里にはまだまだ長い第二の人生が待っていますし、これからは良き親方として“仕切り直し”をしてほしいと思います。




2019年1月17日(木)

 第20話 成人式に思うこと
投稿:星野

113日は、仙台市で成人式が開かれ、振袖姿の女性がまだ若いご両親と一緒に歩く微笑ましい姿が見られました。

 

年月が経つのが早い気がしますが、私も平成生まれの若者と一緒に仕事をする機会が多くなりました。

 

最近は、「荒れる成人式」として各地で話題になりますが、私の知る若者の多くは、礼儀正しく、謙虚で、前向きな姿勢で様々なことに取り組んでおり、非常に好感を持っています。

 

彼らの将来が希望に満ちたものであることを願って止みません。

 

一方、小学校では、10歳を迎える子供達の「二分の一成人式」が開かれてきました。

 

しかし、多様な家庭背景を持つ子供達に対して、幸せな人生を歩んできたという前提で、一律に親への感謝や自分の生い立ちを振り返るような演出に批判も集まっていると聞きます。

 

私自身は、成人式や二分の一成人式は、市町村や学校が行うような公的なものでなくとも、祝いたい、参加したいという人々が、様々なコンセプトを掲げて私的に行えばよいのではないかと考えています。

 

個人的な話になりますが、以前、90歳を迎える患者さんが、自分は戦争の混乱で成人式を祝ってもらえなかったと寂しそうにポツリと漏らしたことがありました。

 

そこで、次の訪問診療で個人的に行ったのが「4.5倍成人式」。

 

そこでは、今、私達が何かの縁でこの患者さんと関わりあっていることに対する感謝、今まで歩んできた長い人生に対する敬意、これからも穏やかに生活してほしいという願いを伝える会にしました。

 

そして、90歳の誕生日のお祝いとして、デーサービスの職員から贈られた色紙の中の写真にあるような弾けるような笑顔を目の前で見ることができました。

 

話が変わりますが、今回で私のブログは「20回目の成人式」(始めてまだ1か月ですが・・・)を迎えました。

 

かなり歳をとるのが早い気がしますが、立派な“成人”となれるよう、引き続き情報発信していきたいと思います。



2019年1月14日(月)

 第18話 甘い糖尿病治療
投稿:星野

以前の糖尿病治療は、血糖をできる限り下げることを目標に、患者さんに厳格な食事制限を求めていました。

 

最近、厳格な血糖管理が必要なのは、糖尿病発症初期の患者さんであり、発症から長期間経った患者さんについては、厳格に血糖管理を行うと、かえって死亡率が高くなるという結果が出ており、特に低血糖を避けることがとても大切だとわかってきました。

 

在宅医療の中で、糖尿病の治療を受けている高齢者の多くは、糖尿病発症から長期間が経ち、認知症があり、何らかの介護を必要とする方です。

 

このような高齢者で、食べることを一番の楽しみにしている方に対して、食べる喜びを奪うような食事制限を求める気にはなれません。

 

患者さん「せんべい食べていいですか?」   私「はいどうそ」

患者さん「チョコレート食べていいですか?」 私「はいどうそ」

患者さん「まんじゅう食べていいですか?」  私「はいどうぞ」

患者さん「ずんだ餅食べていいですか?」   私「はいどうぞ」

 

とまぁ、こんな調子です。


では、どんな対応しているのかというと、著しい高血糖になり過ぎず、かつ低血糖を起こさないように、患者さんの食べる内容に合わせて薬の用量を調整しているのです。

 

患者さんが、美味しそうに食べている姿を見れば見るほど私の食事制限もどんどん甘〜くなるのです。

 

ですが、このブログをご覧になっている糖尿病の方は、これは自分にも当てはまる!と早とちりせずに、まずはかかりつけの先生とご相談ください。


2019年1月10日(木)

 第17話 元気のバロメーター
投稿:星野

寝たきりだった方が、リハビリを導入することにより活動性が高まってくると、表情が豊かになったり、口数が増えてきます。

 

物静かで呼びかけて頷くだけだったある女性が、歩けるようになるにつれ、口数が増え、訴えが多くなってきました。

 

「膝や腰の痛みがだんだん強くなってきました」

「食べるとお腹が張るような気がします」

「おしっこが近くなって疲れます」

 

診察してもさほど問題はなさそうで、真剣に訴えているというより、所々に笑顔が混じります。

 

それを聞いていたご家族がニコニコ笑いながら一言。「おばあさん、いつもの調子が戻ってきたんじゃないの?」

 

もしかして・・・

膝や腰の痛みは、歩けるようになったから?

お腹が張るような感覚は、食事量が増えたから?

尿が近くなったのは、おむつからトイレに起きるようになったから?

 

この患者さんの不調の訴えというのは、実は体調が回復してきた証だったのですね。

 

私「湿布を処方しておきますね。〇〇さんに使ってもらえるなんて、湿布がきっと大喜びしますよ!」

 

患者さんの膝に貼られた湿布が、なんとなく頼もしく思えたのでした。


※ここで記したものは、私が過去に経験した診療の中の一コマを物語風に描いたもので、現在の診療を反映しているものではありません。



2019年1月9日(水)

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