仙台市若林区の診療所  やまと在宅診療所あゆみ仙台 【訪問診療・往診・予防接種】


 第403話 あゆみのシンボル
投稿:院長

当院は、今年5月で開院5周年を迎えます。


開院した2021年から診療している患者さんは、年々減少してきていますが、今もなお元気に過ごされている方もいます。


90代の女性Sさんもそのうちの一人です。


当院が初診した時、脱水症と感染症で、意識がなく、かなり危険な状態でしたが、点滴などの治療が奏功し、3週間目で点滴を終了することができました。


その後は、食事、入浴、リハビリが順調に進み、ベッド上で好きなテレビ番組(プレバトだそうです!)を観たり、新聞を読むことが日課になりました。


8か月後には、車椅子への移乘がスムーズにできるようになり、10か月後には、ついにデイサービスに通所することになりました!


そして、1年後にはついに歩行訓練が始まり、今もリハビリを頑張っています。


当院は、私を含めて職員4人体制で始まりましたが、その後は患者さんの増加とともに、医師を含む職員の数が増え、経過が順調なSさんの診療は、私以外の他の医師が行うようになりました。


そして、202511月に、約1年半ぶりにSさんの自宅で診察する機会があり、Sさんとの再会を喜ぶことができました。


そこには、以前とは見違えるくらいふっくらとして体重が増え、健康的なSさんの姿がありました。


しかし、前かがみになって真剣な表情で新聞を読む姿、ニコニコと診察に応じて下さる姿は、以前とは全く変わりがありませんでした。変わったことと言えば、体重の増加と掛け布団の下に孫の手がひっそりと置いてあったこと(笑)。


そして、今年の採血では、栄養状態の指標の一つであるコレステロール値が過去最高となり、ついに高コレステロール血症になりました!(一般的に、高コレステロールは“悪玉”と考えられていますが、栄養状態が悪化したり、慢性炎症があるとコレステロール値が低値に傾くので、後期高齢者でコレステロール値が高くなることはむしろ望ましいことと考えています)


Sさんの診察を通して言えることは、人はいくつになっても成長できること。


そして、たとえ辛いことやしんどいことがあっても、Sさんのように、できなかったことができるようになるかもしれない、穏やかな日々を送ることができるかもしれない、ということです。


そんなSさんの成長は、当院がまだ“よちよち歩き”だった頃からの成長とも重なっており、Sさんを診療することは、当院の歩みを確認することでもあるのです。


Sさん、これからも私たちと一緒に成長していきましょう!


そして、いつか、ダブルで“成人式”(Sさん:20歳×5倍、当院:20歳×0.5倍)を迎えましょう!


2026年1月31日(土)

 第402話 共感療法
投稿:院長

今まで困難に直面し苦労した時、人は同じ苦労をしている人を見てどのように感じるでしょうか?


「自分と同じ苦労を味わってほしくない」と感じて献身的にサポートする人もいれば、「自分と同じ苦労を味わうのは当然だ」と感じて内心ほくそ笑むような意地の悪い人もいるでしょう。


一方で、「自分と同じ境遇の人がいるのだから自分も頑張らなければ」と思って前向きになれるのならとても健全なことです。


「類は友を呼ぶ」というように、人は自分と共通点を持つ人に親近感を覚えます。

このように、自分と共通点を持つ人に親近感を感じたりする心理作用を、心理学では「類似性の法則」といいますが、訪問診療ではこのような心理を引き出すことも大切なのです。


悩みが深い人には「私が診察している患者さんでも同じ悩みの人が大勢いるのですが、皆さん、親からもらった命を大切にしながら一生懸命に生きています」とか「私も同じような経験があるのですが、本当に辛いですよね」とか、「あのお釈迦さまも生きることは苦と感じていて、生(しょう)・老・病・死の四苦(しく)を示され、この苦痛を和らげるためにひたすら修行に励まれたのです」とか、いくつか例をお話しし、苦悩を完全に解決してあげることはできなくても、共感する気持ちを引き出すことで、少しは苦悩を和らげられるのではないかと感じています。


90代のIさんは、転倒したことをきっかけに膝の痛みに悩まされていました。しかし、定期的に鎮痛薬を飲むことは望まれず、湿布薬で経過観察していました。


ある日のIさんの診察で膝の痛みについて話題が出た時、同行していた当院のベテラン看護師が、「私も膝に湿布を貼っています!」とズボンの裾をまくり上げて自分の膝を公開しました。そこには、湿布が少し腫れた膝に隙間なく貼りめぐらされていました。


「おお〜!」と周囲から感嘆の声。


それをきっかけにその場の雰囲気が和み、この日以来、Iさんの膝の痛みは少しずつ和らいでいきました。


どんな言葉よりも抜群の説得力がある究極の共感療法として、これからは、膝の痛みに悩まされている患者さんには、この看護師を必ず同行させることにしたいと思っています。


診療同行する時には、湿布を貼り忘れないでくださいね〜!


2026年1月22日(木)

 第401話 新年の抱負
投稿:院長

明けましておめでとうございます。


昔は、その年の抱負・希望を抱きながら新年を迎えたものですが、最近はすっかりと保守的で新しいことにチャレンジすることも少なくなり、なんとなく月日が流れてきたような気がします。


そんな中、院長として診療所の中で心がけてきたこととして、「職員が躊躇しないように診療所では何事も率先して行う」ということです。


その中でも、私が特に意識的に率先してきたことをいくつか挙げて、さらにこの場を借りて、新年の抱負を記したいと思います。


〇率先して職場でしゃべる

職場の中では。私語が禁止ということがありますが、職員同士の円滑なコミュニケーションには雑談を含む会話が欠かせません。診療所の中や往診車の中では、私のオヤジギャグが果たして職員に通じるのか確かめるために?仕事に差し支えないようにしながら率先して雑談するようにしています。その結果、今では私よりもおしゃべりで笑い上戸な職員がたくさん出現するようになり、数あるやまと在宅診療所の中では、当院が最も活気ある診療所(騒がしい診療所?)になったのではないかと自負しています。


〇率先して飲食を行う

私が大食いで食いしん坊ということではありません(笑)。患者さんのご自宅で出された軽食、果物、お茶などは、それが患者さんやご家族とのコミュニケーションを円滑にすると判断できる場合は、遠慮しないで率先して美味しくいただくようにしています。


〇率先して帰宅する

院長がだらだらと職場に残っていると職員が帰りづらくなるので、自分の仕事が終わったらさっさと帰宅しています。高市首相は就任時に「働いて働いて働いて働いて働いてまいります!」と宣言しましたが、私は「働いて休んで働いて休んで働いて休んでまいります!」と高らかに宣言して、率先してライフワークバランスを大切にしていきたいと思います。


〇率先して遊び心を持つ

毎年、プラモデルの新作が完成すると職場に持ち込んで、内蔵したLEDを光らせて職員に楽しんでもらうようにしています。昨年末のクリスマスは、診療所でタイタニック、デロリアン、デコトラの模型を光らせたり、リモートコントローラで動かしたりしました。仙台では毎年、年末になると定禅寺通りで光のページェントが観られますが、当院の職員は光のページェントに行く必要がない?ことになっています。今年は、さらに進化させて、マイコンを使ってLEDやモーターを自在に制御できる電子工作をすることが目標です。


〇今年の抱負

私も還暦が近くなり、健康の維持がとても大切になってきています。昨年から地域の医療介護者向けにストレスの対処方法について講演してきましたが、今年も健康の維持や心身にとって有益なことをどんどん率先して実践し、発信していきたいと思います。

まずは、2月に地域の医療介護者向けのOMC(オープンメディカル・コミュニティ)勉強会が開催される予定で、ただいまその準備をしているところです。今回は栄養と睡眠の深い関係についてです!


今年もどうぞよろしくお願い致します。


2026年1月12日(月)

 第400話 節目
投稿:院長

今年もあとわずかになり、今年最後のブログは、とうとう節目の400話になりました。


年末年始は、私たち日本人にとっても大切な節目の時期です。


普段は離れて暮らす家族との団欒、友人との再会、自己啓発、初詣や初売りなど、日常の生活とは違った日々を楽しみにしている方も少なくありません。


私が訪問診療で心がけていることは、この節目の時期に患者さんが心穏やかに安定した状態で過ごしてほしいということです。


そこで、この時期は、病状が安定していない方や方針が定まっていない方に対する時間が増えることになります。


まず、一般的に紹介状と呼ばれる診療情報提供書の記載が普段よりも増えます。

例年に比べて今年は特に多く、体調不良で新たな問題が発見された患者さんの病院への紹介状、新たに老人施設に入所することが決まった患者さんの紹介状、他の専門病院に通院している患者さんの病状や治療経過を記した報告書、歯科治療を受ける患者さんの病状報告書など、毎日のように記載していました。


特に、後方病院に紹介する場合、年末の病院の診療予定を考慮しながら、ギリギリのタイミングで駆け込みのような形で紹介することになり、紹介を快く受け入れて下さった病院連携室の方々、関係する医師や看護師の方々にはこの場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございました!


次に、病状が安定していない患者さん、病状が悪化した患者さんへの予定外の往診です。


特に今年はインフルエンザなど感染症で体調を崩す患者さんが多く、点滴で治療するのか内服薬で治療するのか、どの種類の薬剤を使用するのか、解熱剤はどうするのか、発熱以外の症状はどう対応するのか、患者さんごとにアセスメントして指示することになります。


今年は、1226日金曜日、1229日月曜日ともに、このような予定外の往診が10件ずつと過去最高になり、職員は患者さんがこの大切な時期に安心して過ごしてほしいという願いを込めて時間外まで診療調整したり、診療を手伝ったり、大活躍してくれました。職員の皆さん、どうもありがとう!


しかし、患者さんの中には、残念ながら年越しを前にしてお亡くなりになった方もいます。


しかし、患者さんそれぞれが時には辛いこと、悲しいこと、不安なことと向き合いながら、亡くなるその瞬間までその人らしく精一杯人生を歩んでこられたと思います。短い時間ではありましたが、伴走させていただきながら同じ空間、同じ時間を共有できたことは、私たちにとってこの上のない財産になっています。どうもありがとうございました!


ということで、今年の12月はとても慌ただしく、散らかってしまった診療所の「自分の机の上を今日こそ整理するぞ!」と宣言していたにもかかわらず、いまだに手つかずで、自分の机はとうとう節目を迎えられないまま年越しとなりそうです。


年明けは、自分の机の上の整理計画がどうか「机上の空論」になりませんように!

と祈りを捧げながら今年最後のブログを終了したいと思います。


皆さん、今年1年、どうもありがとうございました。どうぞ良い年をお迎えください!


2025年12月30日(火)

 第399話 雪かき
投稿:院長

仙台では、1214日の日曜日に数センチの積雪があり、早朝、自宅の玄関のドアを開けてみると、庭の芝生がすっかり雪化粧していました。


しかし、雪質が湿ってアスファルトやコンクリート上では、シャーベット状になっており、通行人がとても歩きづらそうです。


これを見て、雪国で生まれ育った血が騒ぎだし、収納してあったスコップを持ち出して、雪かきを始めることにしました。


まずは、玄関の前や駐車場の雪を片付けた後、自宅の前を歩く人達が歩きやすいように歩行路の除雪に移ります。


私が育った新潟の田舎では、雪の積もった朝、自宅の前の道路に積もった雪を隣家まで道踏みしたり除雪したりをするという暗黙の決まり事があり、自宅から隣の家へと続く地域内の道路ネットワークは、こうした住民の共同作業によって維持されていましたが、仙台ではそのような決まり事はありません。


満足度は、結果を期待で割った分数(満足度=結果/期待)で表すと理解しやすいとされています。


つまり、納得する結果を出して分子を大きくするか、事前の期待が少なくて分母が小さくなる方が、満足度が高くなるということです。


これを雪かきに当てはめると、同じ雪かきをしても、雪国では除雪が当たり前になっているのでその有難みが小さく、一方、仙台では雪国と違い、雪が降っても除雪が完了して歩行路が確保されているという期待がもともと少ないので、除雪をすれば通行人の満足度が大きくなるということになります。


スコップを持って道路に出た私は、まず、道端に幅50pほどの歩行帯ができるように除雪していきます。自宅前の除雪が終わると、お年寄りが独居で暮らしている臨家に歩行帯を伸ばし、次に、除雪が済んでいない自宅から200mほど離れたマンション前まで、さらに歩行帯を伸ばしました。


そろそろ除雪を終了しようかと自宅に引き上げようとすると、道路の反対側で立ち往生している3歳ほどの幼児を連れた母子の姿が目に入り、今度は道路の反対側に移り、100mほど歩行帯を作ってこの母子を誘導しました。


「ありがと」


幼児からもらった、かわいらしい感謝の言葉に私は思わずニンマリ。


その後は、自分が作った歩行帯を歩いている通行人の姿を眺めながら、「この人たちはきっと自分の雪かきに満足しているに違いない」と自己満足に浸りながら、休日を気分よく過ごすことができました。


ところが、すぐに雪解けが進み、翌日には私の作った歩行帯は跡形もなく消えてなくなってしまっていました。


冬道や自己満足が夢の跡


ということで、これからも私が雪かきで自己満足するために、仙台では雪が降っても「雪かきが当たり前にならない」ように祈っているところです。


2025年12月23日(火)

 第398話 長寿の源泉
投稿:院長

当院では105歳を超える超高齢者を2名診療しています。


先日、このうちの一人であるIさんの診察にうかがいました。


Iさんは、今も歩行はもちろん、身の回りのことが自立しているスーパーセンテナリアンです(数年前までは確定申告の計算もされていたとか)!


元気な超高齢者で共通していることは、ちょっとした体調不良があっても必ず回復することです。


Iさんは、11月に発熱や血便などがあり、自宅で点滴を受けて静養していましたが、数日後には何事もなかったように見事に復活されました。


Iさん家では茶道教室を開いており、Iさんも以前は茶の湯・裏千家の指導をされていたそうで、現在はお嫁さんが引き継いでいます。

というわけで、Iさん家を訪問するとお茶が出てくる確率が高く、診療アシスタントから事前に作法を教えてもらいました。


「お茶を飲む前にお菓子をまず食べて、両手で茶碗を持って時計回りに2回転して茶碗の正面を自分に向けて飲むといいようです」


診察が終わるころ、期待通り?お嫁さんがお茶を立てて下さいました。


アシスタントの言う通りに、まずお菓子を食べてからお茶をいただこうとすると、さっそくIさんとお嫁さんから指導が入りました。


「左手でお茶碗を下から支えて、右手を右側に添えてください」

「お茶碗は、時計回りに180度回転させるように23回で回してください」

「回し終わった後、茶碗の図柄がある方を自分とは正反対の正面に向けるようにしてください」


あららら・・・アシスタントの事前の説明とずいぶんと違うな〜・・・・(汗)。


といった調子でハプニングがありましたが、無事にIさんの茶道教室・・・ではなく、診察を終了してきました。


茶の湯の作法を指導してもらうのはこれが初めての体験でしたが、Iさんの「長寿の源泉」が身体に染みわたって、なんだか自分の寿命が延びた感じがしました。


というわけで、次回のIさんの訪問では、診療アシスタントの「裏目千家」ではなく、本物の裏千家の作法をしっかりと学習してから茶の湯に臨みたいと思います(笑)。


2025年12月11日(木)

 第397話 オープンカー
投稿:院長

訪問診療では、ご主人の介護にとても献身的な奥さんが少なくありません。


夫が病状の悪化で入院したり、種々の理由で老人施設に入所した時、家族と離れて過ごすことになって寂しい気持ちを解きほぐしてくれるのは、家族の面会です。


離れ離れになった時、住み慣れた自宅では当たり前のような存在が、実は自分にとって最も大切だったと気付かされるのは、夫だけではありません。


今はお亡くなりになったKさんが入院した時、奥さんは自宅から片道10q以上離れた病院まで、大切な人と会うために、雨の日も風の日も雪が舞う日も毎日毎日通い続けたそうです。


Kさんが自宅に退院した日、初めてKさんの自宅を訪問しました。


Kさんは、ほとんど話すことができない状態でしたが、奥さんはKさんの帰宅がとても嬉しそうです。


奥さんと話をしていると、毎日病院に通い続けたことが話題となりました。しかし、奥さんは車の免許を持っていないので、きっとバスを乗り継いでいたのだろうと思って聞いてみると、奥さんから、屈託のない笑顔で「オープンカーです!」と答えが返ってきました。


えっ、オープンカー?


それは・・・実は自転車のことだったのです!


奥さんが小麦色に日焼けしているのは、毎日毎日夫に面会するために自転車で病院に通い続けたからだったのですね〜。


初めての診療が終わり、Kさんの自宅を後にする時、玄関のドアの前に止めてあった「オープンカー」が目に入りました。


少しさび付いて、けして新しくはないこの自転車が、Kさん夫妻の絆を結び付けていたのかと思うと、とても感慨深くなりました。


話は変わりますが、今、私は、地球温暖化に対して個人でできることとして、仙台市内の移動はできるだけ自家用車を使わないようにしています。


通勤は、もちろんKさんの奥さんを見習って、子供が中学校時代に使って乗り古した「オープンカー」。


Kさんの奥さんの十分の一の距離を、このオープンカーで季節の移り変わりを感じながら走っています。親子の絆を確かめるように。


2025年11月29日(土)

 第396話 金言
投稿:院長

今回は、今年、老衰でなくなったSさんと奥さんの感動の秘話についてです。


Sさんは、奥さんと二人暮らし。長年、奥さんの献身的な介護で穏やかに過ごされていました。


当院が数年前に民放で取り上げられた時、Sさんの訪問診療の風景がテレビで流されました。テレビ局の撮影にあたり、Sさんを選んだ理由は、Sさんの家庭がとてもアットホームで訪問診療のあったか〜い風景を届けられると感じたからです。


Sさんの体調が悪化して奥さんの介護負担が強くなり、一時、老人施設に入所されていた時のことです。


食欲が落ち、ほとんど食事が喉を通らなくなり、連日、奥さんが自宅から通ってSさんのそばに寄り添っていました。


言葉を話すことができなくなったSさんは、メモ用紙に「家に帰りたい」と記して奥さんに帰宅の意思を伝えていたようでした。


私は、Sさんの希望を叶えて、自宅で看取りたいという奥さんの気持ちを察し、亡くなる1週間前にSさんは我が家に帰宅することになりました。


それからの1週間は、帰省した娘さんも一緒になって家族で過ごし、とても貴重でかけがえのない時間になりました。


Sさんをお看取りした直後、奥さんは、Sさんから施設で渡されたというメモと、メモをしている様子を撮影した写真を見せて下さいました。


そこには、「〇〇子よ(奥さんの名前)、感しゃするよ 元気でくらせ かねもちになれ」と記されていました。


短い言葉の中にも、ユーモアを交え、なんという思いやりと優しさに溢れた言葉なのでしょう!


奥さんは、Sさんのこの“金言”を胸に、これからも心豊かに過ごされていくに違いありません。

 


2025年11月25日(火)

 第395話 ただでは起きない
投稿:院長

スポーツを観戦して感動したり、元気をもらって生きる力になったりすることが多いです。


最近は、アメリカ大リーグのドジャースの試合が連日BSで放送されるようになり、大谷翔平選手をはじめ日本人選手の活躍が話題になることが多くなりました。


特に今年のワールドシリーズは、私が観た野球の試合の中でも1〜2位を争うようなドラマチックな展開となりました。


Sさんは、進行がんの患者さんで、食欲が落ち、ベットで横になって過ごすことが多くなってきました。


痛みなどの苦痛に対して、麻薬などの症状を緩和する薬剤が欠かせず、最近ではせん妄も出現したり、症状が不安定になってきました。


しかし、ドジャースの試合を観戦することが大好きで、試合中は苦痛を忘れたかのように夢中になってテレビを観ていました。


ある日、Sさんを訪問した時のことです。

その日はワールドシリーズ第3戦で、大谷翔平選手がホームラン2本を打って4安打の大活躍を見せていました。しかし、試合は延長戦に入り、どちらが勝つのかSさんはベットに横になったまま固唾をのんでテレビにくぎ付けになっていました。

私は、Sさんの邪魔にならないように、最近の様子は奥さんから聞き取るようにして、薬の調整をすることにしました。


診察が終わって部屋を出るとき、「今日の試合でドジャースが勝ったら、Sさんは元気100倍になるでしょうね!」と奥さんに声をかけて自宅を後にしました。


診療が終わって、後で試合結果を確認すると、延長18回裏にフリーマン選手がホームランを打ってドジャースが劇的なサヨナラ勝ちを収めたことを知りました。


18回も闘って最後に負けなくて良かった〜」


その後も、まるで高校野球の試合を観ているかのようなドラマチックな試合が続き、山本由伸選手の大活躍もあって、43敗でドジャースが見事に2年連続でワールドチャンピオンに輝きました。


ドジャースが優勝した瞬間、真っ先にSさんのことが頭を過りました。


Sさん、本当によかったですね。おめでとうございます!」


それにしても、ドジャースの試合は、勝つときは手に汗を握るような薄氷の勝利で感動的なのですが、負けるときは中継ぎ投手が大乱調で大量失点し、あっけなく負けてしまうのが特徴です。


これは、きっと「勝ち目のない戦いでは深追いせず、無駄な労力を費やして大きな精神的なダメージを被る前に潔く見切りをつけ、次の行動に移しやすい」ということなのかもしれないと、ポジティブに捉えることにしています。


こう考えると、大敗は後で感動を呼ぶためのお膳立てなのかもしれませんね。


派手に転んでも、医者の手を借りずに?絶対にただでは起きないドジャースの今後の戦いぶりに目が離せません。


2025年11月11日(火)

 第394話 身近に感じるノーベル賞
投稿:院長

今月、スウェーデンのカロリンスカ研究所よりノーベル賞受賞者が発表され、日本から生理学・医学賞には、坂口志文さん(大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任教授)と、化学賞には北川進さん(京都大学副学長)さんが選ばれました。おめでとうございます!


ノーベル賞受賞者に共通するのは、時には批判を浴びたり、孤立しながらも揺るがぬ信念に基づいて問題を追求し続けた粘り強さ、忍耐力とだと思います。日本人としてとても誇らしいです。


ノーベル賞は、人類の営みに対して多大な貢献をした研究者に贈られる賞です。


お二人の研究も、これからの臨床や地球環境に多大な恩恵をもたらすのではないかと期待されています。


やまと在宅診療所あゆみ仙台でも、ノーベル賞の恩恵を感じられることが度々あります。


今から遡ること10年前に大村智さん(北里大学特別栄誉教授)がノーベル医学生理学賞を受賞されましたが。大村先生は、様々な寄生虫に対して高い有効性を示すイベルメクチンという薬剤を開発しました。当時、アフリカを中心とする地域で多発していた寄生虫病オンコセルカ症やフィラリア症(象皮症)に対して、北里研究所から何億という人々にイベルメクチンが無償供与された結果、一部に地域ではオンコセルカ症の撲滅を達成するなど、この地域の医療に対して多大な貢献をされました。


先日、当院が担当するGさんの診察をしていた時、ご家族より「便から虫が出てきました」とスマートフォンで撮影された1枚の写真を見せられました。そこには便に混じって白いミミズのような線虫(回虫)と思われる寄生虫が写っていました。実は、医師になってからこのような寄生虫を見るのは初めてで、とてもびっくりしましたが、その瞬間、私の中には大村先生の名前と顔が頭に浮かびました。


早速、商品名「ストロメクトール」として流通しているイベルメクチンをこの患者さんに処方して、1週間の期間を置いて2回服用してもらったところ、それ以降、この寄生虫の排泄がピタリとなくなってしまったのでした。


さらに、それ以前には、ある老人施設で疥癬(かいせん)という寄生虫の皮膚症状が流行った時、昔はあらゆる手段を使っても駆除に苦労していたこの寄生虫が、イベルメクチンをたった数回服用するだけですっかり完治してしまったので、それ以来、イベルメクチンは私の中では絶対忘れられない薬剤の一つになりました。


一方、日本を代表する作家・村上春樹さんが、今年もノーベル文学賞に選ばれませんでした。


私をはじめとする一部の大ファンにとってどうして受賞できないのか?「腹の虫が収まらない」という残念な結果となりましたが、イベルメクチンを通して発展途上国の多くの人々の命とやまと在宅診療所あゆみ仙台の患者さんを救った大村先生の偉大な業績を身近に感じて、心の慰めにしているところです。


2025年10月31日(金)

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