仙台市若林区の診療所  やまと在宅診療所あゆみ仙台 【訪問診療・往診・予防接種】

過去の院長ブログ


 第58話 救世主の味わい
投稿:星野

在宅医療になくてはならないものの一つに、医療用の経腸栄養剤が挙げられます。

 

経腸栄養剤というと、鼻から通したチューブや胃ろうを使って栄養補給する栄養剤のことか・・・と考えてしまうのですが、今やドリンクタイプの「経口栄養剤」が主流です。

 

今まで、様々な理由で満足な食事摂取ができなくなった多くの患者さんに処方してきましたが、経口栄養剤をきっかけに食事量が安定したという方や、食事はとれないけれど、3食とも栄養剤を飲んで栄養状態が改善したという方は数知れず、私にとっても患者さんにとってもまさに救世主なのです。

 

私がよく処方する栄養剤は、アボットから発売されている「エンシュアリキッド」と大塚製薬から発売されている「ラコール」です。

 

これらの栄養剤は、糖質、タンパク質、脂質の3大栄養素だけでなく、ビタミン、ミネラル、微量元素などの成分もバランスよく配合されています。

 

そしてなんといっても最大の特徴は、その味にあります。

 

例えば、エンシュアリキッドにはバニラ、ストロベリー、バナナ、メロン、コーヒー、黒糖、抹茶の7種類の味があり、ラコールにはミルク、バナナ、コーヒー、コーンスープ、抹茶の5種類の味が揃えられており、多様な味が楽しめるのです。

 

両者の違いをラーメンに例えると、エンシュアは“こってりとした甘さ”、ラコールは“あっさりとした甘さ”で、患者さんの好みに応じて処方することになります。

 

過去には、エンシュアリキッドにあんこを入れて、主食として食事を楽しまれていた方もいらっしゃいました。甘党にはたまりませんね。

 

私としては、いつか、味噌汁、中華スープ、ちゃんぽん、すき焼き、カレー、チキン南蛮、おふくろの味(?)の登場を希望します。


そして、欲張りな方に、宮城のご当地風味として、ずんだ、宮城芋煮、油麩、くるみゆべし、笹かまぼこ味を開発してほしいと思います

 

食というのは、人の心まで豊かにしてくれる大事な治療の一つです。これからも患者さんと共に、食の「醍醐味」を存分に味わっていきたいと思います。


2019年4月17日(水)

 第57話 思いやり満開
投稿:星野

宮城県でも桜が満開になり、週末は晴天にも恵まれ、絶好のお花見日和を迎えています。


すっかり日本の春の風物詩となったお花見ですが、患者さんの中には体が不自由なために、ベッドの上でこの季節を過ごす方も少なくありません。

 

そのような方のために、ある施設職員が、患者さんのベッド脇の壁に見事な桜の花が写ったプリントを貼りだしてくれました。

 

その写真とは、富士山を背景にした河口湖の桜と大河原の千本桜です。素晴らしい!


この粋で少しお茶目な(?)計らいに、患者さんも心和むようなお花見ができたようです。

 

この職員には、「次回も遠山の金さんばりの桜吹雪をよろしく!」と冗談交じりに伝えておきましたが、来年は一体どんな桜が見られるのか今から楽しみです。

 

「この壁に咲いた桜吹雪が、その方(ほう)らの善行をちゃーんとお見通しなんでえ!この思いやり、散らせるモンなら散らしてみろい!」(遠山の金さん風に)

 

これにて一件落着。


2019年4月14日(日)

 第56話 “便利”な表現
投稿:星野

NHK大河ドラマのいだてんでは、主人公の金栗四三さんの日記の内容が語られる場面が出てきますが、日記には「〇月○日 快便」などと、まず始めに便通を記録していたようです。

 

すっきりと排便があった時の爽快感を表現することで、一日一日を気持ちよく過ごそうとしていたことがよくわかります。

 

2017年に日本で初の「慢性便秘ガイドライン」がまとめられましたが、そこには便の回数だけでなく、性状を把握することの重要性が強調されています。

 

改善すべき硬い便の性状を「硬くてウサギの糞のようなコロコロとした便」、理想的な普通便を「表面がなめらかで軟らかいソーセージ状または蛇のようなトグロを巻く便」と具体的に記載されています。

 

さすがに、蛇のようなトグロを巻くという表現は不気味な感じがしますが、表面がやわらかいソーセージ状という表現は、快便を表すにはピッタリだと思います。

 

先日、訪問看護師さんから、いつも便通で苦労しているある患者さんの看護記録がファックスで送られてきたのですが、そこには「両手盛り」の排便があったと記載されていました。

 

看護業界では排便の量についていくつかの表記を使い分けているようですが、「両手盛り」という記載を見た時、看護師さんが“すっきりと出た大量の便を両手にすくって患者さんと一緒に喜びを分かち合う姿”を連想してしまい、とても嬉しくなってしまいました(さすがにそんなことをする看護師さんはいないと思いますが・・・)

 

両手盛りとまではいかなくとも、せめて「表面がなめらかで軟らかいジャンボフランク状の片手盛りの便通」で毎日を気持ちよく過ごしたいものです。


2019年4月11日(木)

 第54話 チコちゃんには内緒ですが・・・
投稿:星野

前回は「スキン湿布」の効能について書きましたが、これこそまさしく「手当(てあて)」ということに他なりません。

 

手当とはよく言ったもので、手で優しく触ることで痛みの緩和につながることが科学的に証明されています。

 

NHKバラエティ番組「チコちゃんに叱られる」によれば、脳の感覚には優先順位があり、触覚は痛覚よりも優先的に感じられるため、痛みを感じた時に手でさすると痛みが和らぐとしています。

 

ちなみに、この番組の実験で、痛みを数値化できる機械で測定すると、触ることによって痛みの程度が4分の1になることが確かめられました。

 

また、ある海外の研究によれば、癌患者に対してマッサージを行うと、痛み以外にも無気力や不安、ストレスの緩和にも効果があることが示されていますし、アルツハイマー型認知症の患者に対してマッサージを行うと、暴力行為や徘徊を減らす効果があることが示されています。

 

さらに、脳に関する研究の中で、触れるという行為を通して、愛情ホルモンとされるオキシトシン、脳内麻薬とされるエンドルフィン、幸せホルモンとされるセロトニンの分泌が高まることが確かめられています。

 

昔は親が子供に対して「痛いの痛いの飛んで行け〜!」と優しく声を掛けてさすったものですが、これにはちゃんと根拠があるのです。

 

チコちゃんには内緒ですが、手当を受けた患者さんの苦痛が緩和され、気持ちよくて「ボーっとできる」ような緩和ケアを目指したいものです。


2019年4月5日(金)

 第53話 “シップ”の効能
投稿:星野

ある老人施設の女性の元には、ほぼ毎日のように息子さんが仕事の合間を縫って訪問します。

 

施設に入所する前は、足腰が衰えてベッド上の生活が多かったのですが、今はすっかり身の回りのことができるようになりました。

 

しかし、体が動くようになるにつれ、腰や関節に痛みが出てきたので、体のあちこちに湿布が貼られるようになっていきました。

 

私は「湿布は処方していなかったはずだけど・・・」と思いながらよく辺りを見回すと、ベッド脇の机の上に市販の湿布薬がそっと置かれていました。

 

患者さんにお聞きすると、この湿布は息子さんがドラッグストアで買ってきてくれたもので、とてもよく効くとのことです。

 

私は思わず息子さんが優しく母に湿布を貼ってあげる光景を想像しないではいられませんでした。

 

湿布の成分には息子さんの愛情も含まれており、私が処方する湿布よりも何十倍も効果があること間違いなし。

 

ところで、気になるこの湿布の“商品名”は? 

 

ええと・・・「スキン湿布」



2019年4月3日(水)

 第52話 新時代の幕開け
投稿:星野

元号が「令和」と発表されました。

 

昨日は、どこに行っても元号の発表を報じるテレビ番組を見つめている方ばかりで、一緒に新しい時代のお祝いができました。というより、テレビに夢中になっている患者さんの邪魔をしないようにそっと診察しました。

 

今回、発表された「令和」は、645年の「大化」から数えて248番目の元号ですが、前回の「平成」の発表とはいくつかの点で異なっていることがあります。

 

それは、天皇陛下が生前退位なさるので、発表から1か月間の移行期間があること、平成の時のような自粛ムードが一切ないこと、初めて日本の古典から言葉が引用されたことなどです。

 

私は昭和の戦後生まれですが、昭和と言えば忌まわしい戦争の記憶が刻まれている方も多く、平成に移行する際、「戦争と決別して、一つの時代にけじめをつける」という意味が強かったと思いますが、今回は「平成を名残惜しむ」という方も多いかもしれません。

 

また、今回の元号が引用された万葉集は、奈良時代に編纂された最古の和歌集で、そこには天皇や貴族だけでなく、幅広い身分の人々の歌が収められており、今回の選定の意義を感じることができます。

 

令和が引用された万葉集にある「初春令月、淑風和」は、「初春のこの良い月に、は良く風はやわらか」という意味だそうですが、今の季節感ピッタリの言葉から引用されていることに感心してしまいます。

 

過去を振り返ってみると、紀元前660年に初代天皇である神武天皇がし(日本の建記念日である211日はこの神武天皇がした日とされています)、それから2679年の間、天皇の系図は途切れることなく脈々と受け継がれてきました。

 

元号にはその時代の背景や願いが反映されるものですが、世界で最も古い皇室を持ち、世界で唯一の元号を持つ日本の国民として、新時代の到来を噛みしめ、令和が私達にとって素晴らしい時代になってほしいと心から感じています。


2019年4月2日(火)

 第51話 夫婦げんかの味
投稿:星野

世の中、毎日、夫婦げんかばかりしているという家庭が少なくありません。

 

夫婦関係をよく続けていられるな〜と考えてしまうのですが、仲の良い夫婦には、”けんかの流儀゛というべきものがあるようです。

 

その流儀とは・・・。

 

第一に、けして相手の人格を傷つけるようなことは言わないということです。

 

イライラすることはあっても、文句をつけるのはいつも相手の行動に対してです。

 

「罪を憎んで人を憎まず」という言葉の通り、文句をつけたくなった時、「相手の行動に腹立たしく思っているのか?」、「相手を憎んでいるのか?」の二つを区別して、もう一度冷静に考えたいものです。

 

第二に、文句を言いうと気分が晴れるということです。

 

さんざん言いたいことを言ったら気分がさっぱりしたということをよく聞きますが、それは健全な口げんかの証拠。そのような夫婦は、けんかのゴール地点が決まっており、すぐに人間関係がリセットされ、けして破綻しません。

 

逆に、文句をつければつけるほど頭に血がのぼってくるというのは要注意で、売り言葉に買い言葉がエスカレートしやすく危険な状況だと思います。

 

第三に、仲直りのきっかけが決まっているということです。

 

けんかした後に、言い過ぎたと自責の念にかられて謝ることができたり、時間が過ぎてから何気なく普通の会話ができたり、仲直りのパターンが決まっている夫婦は、多少の気持ちの行き違いがあったとしても、それを認めてすぐに関係を修復できるものです。

 

第四に、しばらくけんかしないでいると、けんかが恋しくなるということです(笑)。

 

Bさんは、退院したばかりの頃、すっかり体が衰えて経鼻栄養が欠かせませんでしたが、奥さんの献身的な介護で徐々に食べられるようになり、ついに食事の味付けに文句を言うようになりました。

 

奥さんは、ちょっぴり腹立たしい思いで口ごたえしつつも、「元気が出てついに文句を言えるようになった!」と久しぶりの“夫婦げんかの味”に感激していたようです。

 

世の中、「けんかできる相手がいてうらやましい!」と考えている人は大勢いらっしゃるのです。

 

毎日毎日、けんかばかりで少しうんざりという方は「夫婦げんかのない世界」を一度想像してみてはいかがでしょうか?実はそのけんか、“至福の時”かもしれません。

 

夫婦げんかを通して、「けんかは仲の良い証拠」を示していきたいものですね。

 



2019年3月30日(土)

 第50話 商いの心
投稿:星野

私が子供の頃、富山の薬売りのおじさんが年に数回、自宅にやってきて薬を売りさばいていたものです。風邪薬はもちろん、修学旅行での「酔い止め」、今は懐かしい「赤チンキ」はよく利用させてもらいました。

 

そのおじさんとは親しくなり、家族ぐるみのお付き合いをさせてもらい、小学校の頃は富山県のご自宅に遊びにいくのが楽しみでした。

 

富山の薬商人の歴史は古く、16世紀までさかのぼりますが、江戸時代に藩の保護を受けて発展し、「置き薬商法」といって、まず薬を使ってもらい後から料金を徴収するという商法で全国に販売網を広げていったそうです。

 

今はすっかり衰退していたと思っていたのですが、数年前、ある田舎で高齢の患者さんのご自宅に訪問診療に伺っていた時のことです。

 

玄関先で訪問販売の声がしたので、患者さんの奥さん(80歳代の方です)が玄関に出て何やら親しく話を始めました。

 

帰りがけに確認すると、訪問客というのはなんと富山の薬の行商で、商品箱の中には薬がどっさり入っていました。

 

何十年ぶりにみる風景に懐かしさを感じながら、訪問診療の最中に風邪薬はもちろん、“生理痛に効く”と記載された鎮痛薬を受け取る奥さんの様子を目の当たりにしておかしさをこらえきれませんでした。

 

顧客とコミュニケーションを図り、顧客の健康状態やニーズにきめ細かく対応し、信頼を積み重ねてから料金を徴収するという行商プロセスやそれを支えるシステムは今も受け継がれており、自分にとっても大いに参考になることが多いのです。

 

私は普段、「どんな仕事に従事しているのですか?」と聞かれたとき、「サービス業に従事しています」と答えることが多いのですが、心のこもった“商いの心”を大切にしていきたいと思います。



2019年3月27日(水)

 第49話 人生の分岐点
投稿:星野

今日は、恥ずかしながら「医者の不養生」の話題です。

 

先日、岐阜県の保険医協会が実施した調査で、開業医の死亡時平均年齢が約70.8歳だったという結果が発表されました。

 

年代別死亡数では60歳代が最も多く、一般的な日本人のピークである80歳代よりも、かなり若い年代にシフトしているという衝撃的な内容でした。

 

さらに、医師に向けた別のアンケート調査では、自分を不養生だと感じている医師は70%に及び、その理由として「運動不足」を挙げた医師が最も多く(58%)、その他に「仕事のストレス」、「健康診断を受けていない」、「食生活の乱れ」が30%を越えていました。

 

これらは必ずしも一般的な医師の平均像を反映するわけではないのですが、医師こそ自分の働き方だけでなく、生活習慣を見直すことが必要です。

 

さらに、入院患者さんの転帰を調べた海外の調査では、担当医が60歳を過ぎると、若い担当医に比べて僅かながら患者さんの死亡率が高くなるという結果も出ています。

 

これは、医師が高齢になるほど記憶力や判断力が低下したり、最新の医療知識を身に着けることが難しくなったりすることが一因なのかもしれません。

 

まさに、医師にとって、60歳代が自分にとっても患者さんにとっても「人生の分岐点」というわけです。

 

今後、長生きができないという理由で医師という職業が敬遠されたり、患者さんから“体調を心配されるような医師”が増えないことを祈るばかりです。

 

「自分のことを不養生だと思いますか?」

 

この質問に対して自信を持って否定できるような医師を増やすことが、医師不足解消のヒントになりえるのかもしれません。



2019年3月25日(月)

 第48話 2つの命題
投稿:星野

イチロー選手が現役引退を発表され、大ファンとして感慨深いものを感じています。

 

2004年に大リーグの年間最多安打を達成した時、2009年にワールドベースボールクラシックの決勝戦で決勝打を打った時、2016年に大リーグ通算3000本安打を達成した時は、日本人として誇らしく、興奮してなかなか寝付けなかった思い出がよみがえります。

 

イチロー選手と言えば、普段の生活や試合前のウオームアップ、そして打席ごとに同じ習慣や動作を繰り返す「ルーティーン」を実践していたことで知られています。

 

ルーティーンの効果とは何でしょうか?

 

イチロー選手に限らず、ラグビーの五郎丸選手がキックを蹴る時に行う拝みポーズや、ウサインボルト選手がレース前に行う十字架のポーズは有名ですが、ルーティーンを行うことで気持ちを整理し、ストレスや不安を取り除き、集中力を高めて試合に臨むことができるのです。

 

ただ残念な点を挙げると、イチロー選手のルーティーンが食事に及んでいたことです。

 

イチロー選手の偏食は有名で、子供の頃から野菜嫌い、選手時代もカレー、うどん、パンなど同じパターンの食事を繰り返していたそうです。

 

重圧と闘いながら、数々の「不確定要素」を取り除くためには必要だったでしょうし、この徹底したルーティーンのおかげで集中力を保ち、数々の偉業を達成できたのだと思います。

 

しかし、「もしもイチロー選手が、若い時からバランスの良い食事をしていたら・・・」

 

50歳を過ぎても選手として活躍する姿を勝手に想像しながら、イチロー選手のこれまでの偉業を振り返っているところです。

 

「人として、キャリアのピークをどのようにして過ごすのか?」

「そのピークは過ぎたけれど、どのようにしたら長期間続けられるのか?」

 

相反する要素を数多く含んでいるこの2つ命題に対して、どう折り合っていくのか、一人一人に与えられた課題なのかもしれません。



2019年3月23日(土)

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