第233話 クリニックの顔 |
投稿:院長 |
クリニックにはひっきりなしに電話が掛かってきます。
患者さんの紹介、往診の希望、薬局の問い合わせ、患者さんの状態報告、病状への対応方法の確認、行政とのやり取り、業務提携など、新しいクリニックには、掛かってくるすべての電話がとてもありがたく感じます。 今、クリニックの電話を通してやり取りする情報交換の多くはマネージャーを経由しているのではないかと思います。
マネージャーは、掛かってきた電話の聞き取りから説明、私への取り次ぎなど、ありとあらゆる電話対応を丁寧にこなしてくれています。
とても人当たりがよく社交的で、院長の私の理念をよく理解し、右腕になって支えてくれる頼もしい存在なのです。
おかげで、院長の私が直接電話に出ても、「マネージャーはいますか?」と言われることが多くなりました(笑)。
今や、右腕どころか、あゆみホームクリニック仙台の「顔」としてこれからも大いに活躍してくれることでしょう。
しかし、彼の欠点は、仕事が大好き過ぎる(?)こと。
仕事にのめり込みすぎて、奥さんから「うちの主人はいますか?」と電話が掛かってきたりしないように、家庭のマネジメントでも活躍を期待しています。 |
2021年7月15日(木) |
第232話 心の虹 |
投稿:院長 |
先日、初めての診察を行うためにAさんのご自宅に向かっていた時のことです。
その途中、電話で別な患者さんが、急に状態が悪化したとの通報を受けたのです。
ちょうどAさん宅にたどり着いたので、玄関先でご家族に事情を説明し後ほど診察に伺いますとお伝えしたところ、ご家族から「私達は後でよいのでどうぞ行ってあげてください」と一言。
私達は、この温かい言葉に励まされて急変した患者さんの往診に向かうことができました。
また、梅雨のこの時期、悪天候の中、患者さんの診察に伺うと「雨の中ご苦労さまです」「先生方もどうぞご自愛ください」との言葉をいただくことがしばしばです。
あゆみホームクリニック仙台のロゴには虹が描かれていますが、虹は雨上がりの空に見られる美しい光景で、訪問診療とは、たとえ困難があったとしても、様々な方に支えられながら心の虹を一緒に創り上げていく作業なのではないかと思うのです。
只今放送中のMHK朝ドラ「おかえりモネ」の主題歌「なないろ」にはこんな歌詞があります。
手探りで今日を歩く今日の僕が あの日見た虹を探す僕を疑ってしまう時は教えるよ あの時の心の色♪♪
医療では、予想外の出来事が起きたり、思い通りにいかないことがしばしばなのですが、そんな時こそ患者さんやご家族から教えられるのです。この仕事の素晴らしさ、やりがい、医療者を志した時の心の色を。 |
2021年7月9日(金) |
第231話 名は体を表す |
投稿:院長 |
老人施設には様々な名前が付けられていますが、入所するお年寄りが穏やかに過ごしてもらえるよう開設者の願いがそこに込められていることが多いと思います。
やすらぎ、ゆとり、くつろぎ、ほほえみ、ふれあい、ほのか、いこい、のどか、しずか、ぬくもり、なごみ、いやし・・・。
そのような名前がついた施設では、入所者だけでなく、温厚で穏やかな職員が多く、とてもアットホームです。
その一方で、認知症特有の介護抵抗、暴言、徘徊を示した高齢者に対して、何かにつけて薬物的な対応を求めてくる施設もあるのですが、本来、敬われるべき高齢者の精神や人格までを真っ先に薬でコントロールしようとすることに賛成できません。
そのような施設では職員に余裕がなく、入所者に対する言葉使いや態度が冷ややかでちょっと殺伐とした雰囲気です。
施設全体の雰囲気は入所者だけで決まるものではなく、経営者や職員の雰囲気が入所者に伝わり、施設全体の雰囲気に大きく影響を及ぼすのです。
物忘れが進んで、体験した一つ一つの出来事は忘れても、人としての感情(嬉しかったこと、悲しかったこと)は心に刻まれており、嬉しかった時は安心し、嫌な思いをすれば不安になり行動に表れることが多いのです。
それは、認知症であろうがなかろうが、少しも変わりありません。
今、介護職員の労働環境が問題になることが多いのですが、だからこそ、介護の原点を見つめ直し、職員も高齢者も気持ちよく過ごしたいものです。
「名は体を表す」と言いますが、老人施設で付けられている穏やか言葉は、本来、人が持つべき心のありようを示しています。
自分も歳をとったら、やすらぎ、ゆとり、くつろぎ、ほほえみ、ふれあい、ほのか、いこい、のどか、しずか、ぬくもり、なごみ、いやし・・・こんな環境で平穏に過ごしてみたいなぁ・・・。 |
2021年7月3日(土) |
第230話 資格とは? |
投稿:院長 |
昨年の「エール」に引き続き、NHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)「おかえりモネ」を楽しんでいます。
主人公の永浦百音(通称モネ)は、高校卒業とともに気仙沼の実家を離れ、登米で地元の名物おばさんの自宅に下宿しながら山林の仕事に携わるようになりますが、モネが大自然に囲まれる生活の中で天気の魅力に目覚めて気象予報士の試験に挑戦・合格し、その資格を生かしながら人として成長していく姿が描かれています。
番組では、町の診療所に勤務する若手の菅波医師が、節目節目でモネの重要なアドバイザーの役割を果たしており、そのやり取りがとても面白いです。
先日の番組で、資格について取り上げられました。
モネが「資格とは何か?」と菅波医師に問いかけたところ、菅波医師は「資格を必要とする仕事の多くは他人の財産や生命に直接関わる」「何かミスをすれば目の前の人の命を奪ってしまうかもしれない、それぐらい重い資格が自分にはあるのか、それを問うものだと思う」と答えます。
この菅波医師の答えに対してモネは「人の財産や命ときちんと向き合えるものを身につけたい」「誰かが悲しい思いをしないように、守ってあげている、そういう力を私も身に着けたい」と打ち明け、気象予報士の資格試験に挑戦することになりました。
この場面をみて、医療や介護の資格について深く考えさせられました。
医療や介護で扱う生命とは単に人の生死というだけでなく、人の健康、生きがい、尊厳に関係しています。 医療や介護で扱う財産とは単に人の有形の所有物というだけでなく、人の功績、経験、価値観に関係しています。
人の命や財産を守る資格はとても重く、単に取得することが目的であってはいけない。資格というのは、モネの言うように、人の命や財産ときちんと向き合っていくための知識や技術であり、強い使命感が求められていることを再認識し身が引き締まる思いでした。
話が変わりますが・・・菅波医師は、モネに対して常にぶっきらぼうな口の利き方をしますが、「きっとその態度の裏にはモネに対して好意を抱いているに違いない」「きっと二人は恋に落ちていくに違いない」と勝手に想像しています。
私に「恋の気象予報士」としての“資格”があるのかどうか、これからの番組の展開を楽しみにしています。 |
2021年6月26日(土) |
第229話 老年的超越 |
投稿:院長 |
新潟に住む高齢の母と、週に1回以上は電話で話をする機会がありますが、昔に比べて変わったことがあります。
それは、母から感謝の言葉を聞くことが多くなったということです。
母は、父が亡くなってから実家で一人暮らしをしていますが、近所、親戚、友人、老人会など数多くの人との交流があり、ちっとも寂しそうでありません。
電話では、いつどのような人と会って、どこで何をしてもらったのか事細かく話をしてくれますが、必ず周囲への感謝や私への感謝の言葉で締めくくられます。
年令を重ねると、徐々に衰えゆく自分の身体と向き合わなくてはなりませんが、老いをありのまま受け入れ、自然体で生活している人ほど幸せそうです。
高齢者が、自己中心的で合理的な考え方から解放され、自然とのつながりを感じ、老いを受け入れるように価値観が変化していくことを「老年的超越」と呼び、高齢者の幸福感につながることが指摘されています。
「一人でいることもポジティブに考えられる」、「人のありがたさを実感し感謝している」、「自分の人生は意義があったと考えている」、「見栄を張らない」「無理をしない」などの傾向がある人ほど、この幸福感を保てるそうで、今の母にすべて当てはまるのです。
健康や美容などでアンチ・エイジング(=抗加齢、アンチとはantipathy反感・嫌悪の頭文字)が流行っていますが、歳をとったら、ありのままの自分を受け入れるシンパ・エイジング(シンパとはsympathy共感・同調の頭文字)の方が幸せな気分で過ごせるということです。
よく考えてみると、高齢者医療の究極の目標もそこにあると言って良いのかもしれません。
50歳を過ぎて、小じわ、シミ、薄毛、白髪が目立つようになりがっかりしていましたが、まずは自分自身で「ありのままの自分」を受け入れてみようかな・・・(笑)。 |
2021年6月21日(月) |
第228話 安心を届ける |
投稿:院長 |
6月12日に、当院で2回めとなるコロナワクチンの予防接種を行いました。
当日は、居宅患者さんを中心に13ヶ所を回って計18名の方に接種を行いました。
このところ体調に変化があって、予防接種を行うかどうか注意が必要だった患者さんは見事に体調が回復しており、予定通り接種を行いました。
接種を行った後は、アドレナリン注射液を手元において、アナフィラキシーという重篤なアレルギー症状に注意しながら、15分以上その場で見守るのですが、すべての場所で、予防接種を無事に受けることができたという喜びに包まれて和気あいあいとした雰囲気でした。
このときに感じたのは、コロナワクチンに関する様々な情報が流れる中、身体が不自由で接種会場に行くことができない方々が、どんなに不安な思いで過ごされていたかということです。
そして、このワクチンは単なるワクチンではない、安心を届けるワクチンなのだと。
皆さんの姿を見て、その役割を果たすことができて本当に良かったと感じました。
こうして、ワクチン接種が終盤に差しかかる頃、前日2回目の接種を受けた私の身体に副反応が出始め、すべての予定が終了してから帰宅し体を休めることにしました。
そして今日、体調が回復し元気に訪問診療に出かけた時のことです。
患者さんのご家族で、別な会場でやはり2回目の接種を受けた方が、「予防注射を受けた次の日は、だるくて眠くて何もする気が起きませんでした」とおっしゃるので、「私もそうでした!」と意気投合し、お互いをねぎらい合いました。
ということで、今日は、共感を届けることができました(*^^*)。
あゆみホームクリニック仙台では、コロナワクチンの予防接種に対して、他の医療機関と役割分担をしながら、私達にできる貢献をしていきたいと思います。 |
2021年6月15日(火) |
第227話 ジャガー来たる! |
投稿:院長 |
先日、ある雑誌の企画で、女子プロレスラーでタレントのジャガー横田さんがクリニックに来院され対談を行いました。 この話を電話で聞いた時は半信半疑だったのですが、本当に来院されたので職員一同びっくり仰天でした。
ジャガーさんのご主人は医師で、「気弱な夫」として一緒にバラエティー番組に出演されていたことを覚えている方も多いかと思います。
ジャガー横田さんがインタビューアーに選ばれたのは、そんな理由からではないかと推測していますが、対談では、在宅医療の意義、在宅医療に対する意気込み、この地域に対する意気込みを熱く(?)語らせていただきました。
ジャガー横田さんといえば、少し強面の容貌と低音の声を想像しますが、実際のジャガーさんは、小柄で大人しく、とても礼儀正しい方でした。
それにしても、数ヶ月前に何もなかった空間でジャガー横田さんと対談するなんて不思議なものです。
対談が終了した後は、ジャガーさんを一目見ようと来院していた私の妻と「医者の夫を持つ妻の苦労」で意気投合し盛り上がっていました(-_-;)。 |
2021年6月11日(金) |
第226話 コロナワクチン予防接種大作戦 |
投稿:院長 |
6月5日、当院で初のコロナワクチン予防接種に取り組みました。
コロナワクチンの予防接種は、保存、ワクチンの希釈、注射器への分注、運搬、注射といったすべてのプロセスで、他のワクチンとは異なる取り扱いが必要のため、受ける方々に負担が生じないよう、せっかくのワクチンが廃棄とならないよう、細心の注意を払って進めました。
また、強力な応援部隊として、すでに接種経験のある登米市のやまと在宅診療所の看護師さんにお手伝いを頂きました。ありがとうございました。
当日は、居宅3名、施設32名、新入職員1名に対してワクチン接種を行いましたが、患者さんのご家族や施設職員のご協力を頂きながら、職員で役割分担して進めた結果、トラブルなく無事に終了することができました。
当院では、しばらく土曜日の診療を最小限にしてワクチン接種に取り組む予定で、次回は居宅の患者さんを中心に予防接種を行います。
さて、今週は私自身も2回目のワクチン接種を受ける予定です(4月に開業準備に追われて自分自身への接種が遅れてしまいました)。
2回目の接種で、発熱や倦怠感といった副反応が比較的高率に出現すること、こういった副反応は高齢者で少ないことが報告されていますが、副反応が出現した場合は、「自分はまだ若い」とポジティブに解釈して乗り切ろうと思います。
ワクチンを打たれて今日の院長は元気がないな・・・と感じたら、ムチを打つ・・・じゃなくてムネを打つような労りの声をかけて頂けたら大変嬉しいです。 |
2021年6月6日(日) |
第225話 偉大なる父 |
投稿:院長 |
先日、ある患者さんが3ヶ月の入院を経て退院し、初めて診察に伺った時のことです。
入院中に会えなかった息子さん、お孫さんと久しぶりに対面し、声をかけられた患者さんの目尻から一筋の涙が流れてきました。
患者さんの姿を拝見していると、とても大きな手をされていることに気づきました。
比べてみると、息子さん、そして成人になったお孫さん、そこにいる誰よりも大きな手でした。
父として、包み込むようなこの大きな手で長年家族を支えてきたのでしょう。
長い闘病を経て体は痩せてしまいましたが、偉大な父の面影をそこに感じることができました。
この光景を見て、私の父が亡くなる前日、病床に駆けつけて父の手を握った時のことを思い出しました。
握り返す力はありませんでしたが、子供の頃に感じた父のとても大きな手はまったく変わっていませんでした。
かつて、この手で私を抱きかかえ、手をつないでくれたあの大きな大きな父の手でした。
父の手の感触は、一生忘れることはありません。
帰宅後、中学生の長男と手の大きさを比べてみました。
手のひらを合わせてみると、成長した長男の手は私と同じ大きさになっていました。
あの小さかった手がこんなに大きくなったのか・・・。
手はすっかり「等大」の父となってしまいましたが、子供の成長を嬉しく思いました。
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2021年5月31日(月) |
第224話 嬉しい便り |
投稿:院長 |
一般的に、役所からの通知というのは、それがもとで複雑な手続きや出費が新たに発生したりして、良いイメージがないという方が多いかもしれません。
しかし、5月に入って、メールや郵便で役所から“嬉しい便り”が続々と届いています。
それは、4月に提出した様々な資格申請を正式に認可したという知らせだからです。
まるで合格通知のようで、厚生局や市、県の担当部署からの通知をこれほど心待ちにしていたことは初めてです。
ということで、今月から、在宅療養支援診療所として必要な施設認定はすべて取得することができました(認定を見越してすでに診療を開始していましたが)。
また、新型コロナワクチンの予防接種を行うためには、それぞれの医療機関が持っている保険医療機関コードをもとに申請するのですが、厚生省の担当部署には、当院のような新規クリニックのコードがまだ登録されておらず(泣)、市や県に掛け合って、別なコードを取得し、5月21日にようやく施設登録を完了することができました。医師会はじめ市や県の担当部署の方々には大変お世話になりました。
開業してから、患者さんやご家族、施設関係者の方々からコロナワクチン接種の要望を多数頂いていたので、是非その期待に応えていきたいと思います。
そして、次のターゲットは警察です。
えっ、警察?
先週、新しい往診車が納入されたので、駐車禁止除外標章の交付を受けるためです。
ということで、今週中にビクビクしながら・・・じゃなくてワクワクしながら警察に乗り込んで来る予定です(^O^)v。 |
2021年5月25日(火) |