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第109話 虫の息 |
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投稿:星野 |
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前回は、人類の滅亡などという物騒なことを書きましたが、今日も、地球で観測されている生態系の乱れの一例について書きたいと思います。
それは昆虫の減少です。
今、昆虫は毎年2.5%ずつ減少していることが指摘されており、研究者の間では、100年後に昆虫は絶滅するのではないかと懸念が広がっています。
その原因として挙げられているものは、大規模農業による農薬の散布、殺虫剤の使用、都市開発、森林破壊、気候変動による生息地域の減少です。
「えっ、昆虫?害虫がいなくなるのは好ましいことじゃん!」
などと思われるかもしれませんが、昆虫は、鳥、魚、哺乳類にとって重要な食糧となっており、さらに、地球上の80%の植物は昆虫によって花粉が運ばれ、昆虫はその受粉に重要な役割を果たしているのです。
また、ある昆虫は、土壌を健全に保ち、栄養素をリサイクルし、害虫を駆除するなど、人間にとって大きな役割を果たしてくれています。
この生態系の維持に重要な役割を担っている昆虫が減少すると、人類の生存にとって必要不可欠な食糧や木材、繊維の生産を脅かすことにつながるのです。
まず、私達ができることは、無秩序な農薬や殺虫剤の使用を控え、緑を排除した無計画な都市開発をやめ、小さな虫にとっても優しい自然環境を作っていくことです。
私が子供の頃は、草むらにはトノサマバッタが跳ね回り、池の周辺にはオニヤンマ、ギンヤンマが飛び交い、木々からはニイニイゼミやヒグラシの大合唱が聞こえ、花の周辺にはアゲハチョウが舞い、夜の小川にはホタルが幻想的な世界を作り、堆肥の中にはカブトムシの幼虫が所狭しと住み着いていたものですが、こんな昆虫達の世界が、もはや再現不可能な単なる懐かしい思い出になってほしくありません。
地球上に、人間だけが繁栄する“虫のいい世界”なんてあり得ないのです。
自分達の利益だけを考え、自然破壊に歯止めをかけようとしない悪い虫が、このまま人間に取り付いてしまわないように祈るばかりです。 |
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2019年10月21日(月) |
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第108話 人類の滅亡 |
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投稿:星野 |
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今回は、前回の台風の話題にも関連して、かなり衝撃的な表題としましたが、個人的には気候変動が原因で人類の滅亡がありうるのではないかと本気で考えています。
気候変動の原因は地球温暖化。
そして、地球温暖化の原因となるのは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排泄です。
地球温暖化が進むと・・・
1)生態系のバランスが崩れて食糧が不足する。 2)氷河が溶け出し、海面が上昇した結果、沿岸部の一部が水没し、高潮や洪水の影響を受けやすくなる。 3)相次ぐ異常気象、山火事の発生、台風の発生による被害が繰り返し起こる。
などの問題が深刻化すると言われています。
こう考えると、毎年のように起きる台風の被害も、天災ではなく人災かもしれません。
現在、地球の平均気温は、産業革命前から1.1℃上昇し、このペースでいくと2030年には1.5℃に達するとされ、ある有名な科学者は、1.5℃を越えると、もはや後戻りできない変化が始まると強く警告しています。
ということは、人類の未来が、あと10年足らずで決してしまう可能性があるのです!
2020年から、気温上昇を1.5℃以内に抑えることを目標としたパリ協定が発動される予定となっており、参加各国は、それぞれが掲げた数値目標を達成することが求められています。 そして、パリ協定に参加する77か国が、2050年までに温室効果ガスの排泄をゼロにすると約束しています。
日本は、2050年までに温室効果ガスの排泄を8割削減することを目標に掲げていますが、いまだに石炭火力に依存する割合が高く、風力や太陽光などの再生可能エネルギーの総電源に占める割合は16%と先進国の中でも低く、取り組みが不十分と指摘されています。
温室効果ガスの排泄は、企業活動がその7割を占めています。
近年、企業の社会的貢献(CSR:Corporate Social Responsibility)という言葉が注目されています。
それは、企業は自社の利益を追求するだけでなく、消費者、地域社会、環境に配慮した企業活動を行うべきとする経営理念です。
私達には、生活者として暮らしの中で省エネを常に考えること、消費者として企業がCSRにしっかり取り組んでいるか厳しく監視すること、経営者・労働者としてCSRに積極的に関わっていくことが求められています。
かつて、食物連鎖の頂点として1億年以上も繁栄した恐竜ですが、そのほとんどが絶滅し、気候変動がその大きな要因とされています。
恐竜に起きたことが人間で起きないとは言い切れません。
私達には、CSRを超えて、次の世代、未来の人類に配慮した活動が求められています。 |
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2019年10月17日(木) |
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第107話 普段通り |
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投稿:星野 |
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10月12日の午後から13日の早朝にかけて、台風19号が東北地方を通過し、次々と発せられる避難情報にとても緊張しながら一夜を過ごしました。
幸い、この間、私の周辺では、新たな被害や体調不良はなく安堵しています。
しかし、各地では、水害などにより亡くなった方、被災した方もいらっしゃり、ご冥福をお祈りすると共に、一日も早い復興を願わずにはいられません。
そして今日、台風の通過後、初めて診療に出かけました。
途中、名取川の河川敷ではなんと少年野球が行われていたり、畑仕事で汗を流している人の姿があったり、いつもと変わらない日常の光景を見ることができ、ほっとした気分になりました。
日常の診療では、患者さんに体調を聞くと、「まあまあだね」と返ってくることも多いのですが、この言葉には、「普段通りで調子は悪くない」という意味が自然な形で込められており、個人的には好きな言葉の一つです。
人の営みには、時に、贅沢なこと、賑やかなこと、感動的なこと、絶好調なことはあっても良いけれど、自然現象を前にすると、普通に過ごすことがいかにありがたく、幸せなことか強く感じさせられます。
いよいよ明日から連休明け。
多くの患者さんから「まあまあだね」と返ってきますように。
そして、多くの人にとって普通の日となりますように。 |
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2019年10月14日(月) |
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第106話 ノーベル賞イチ押し |
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投稿:星野 |
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スマートフォンやパソコンに欠かせないリチウムイオン電池を開発した吉野彰(よしのあきら)さんが、ノーベル化学賞を受賞されたことが大きな話題になっています。
世界中に広く普及し、今や日常生活で欠かせなくなったものが、長い年月と多くの労力をかけて日本人の手で開発されてきたものであることを知り、とても誇らしく感じてしまいます。
吉野さん、本当におめでとうございます!
その一方で、私がノーベル医学生理学賞を絶対に受賞するべきだと考えているイチ押しの方が、東京農工大学特別栄誉教授の遠藤章(えんどうあきら)さんです。
遠藤さんは東北大学を卒業され、血液中のコレステロールを低下させるスタチンという薬を開発した方で、この薬のおかげで、心筋梗塞や狭心症の危険性の高い人の発症を予防し、世界中の数多くの人々が救われてきました。
この薬は、1989年、私が学生の頃に初めて発売され、今や全世界で4000万人の人が服用していると言われ、私のような一般の臨床医も、ほぼ毎日この薬を処方していると言っても過言ではありません。
先日、遠藤さんが、母校の東北大学で学生に向けて特別講義をされたことが新聞で報道されていました。
遠藤さんは現在85歳。
ノーベル賞は、受賞された方のメッセージを知ることに大きな意味があります。
それは、受賞者がどのような思いで研究に携わってきたのか、どのような経緯で発見や開発につながったのか、その過程でどのような苦労があったのか、これからの人類にとってどのような意味があるのか、その言葉の一つ一つが人類の歴史や財産になるからです。
遠藤さんがノーベル賞を受賞されるその日がやってくることを願ってやみません。そして、その時、遠藤さんがどのような言葉を残されるかとても楽しみにしています。
毎年、ノーベル文学賞の有力候補として名前の挙がる作家・村上春樹さんのファンを「ハルキスト」、安室奈美恵さんのファンを「アムラー」などと呼んだりしますが、私はすっかり「アキラー」です。 |
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2019年10月11日(金) |
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第105話 個別サービスの未来 |
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投稿:星野 |
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2019年10月7日(月) |
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第104話 がっかりだけどおめでたい |
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投稿:星野 |
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訪問診療では、様々な方々から診療の依頼を受けますが、残念ながらお断りをするケースもあります。 ある男性は、患者さんである奥さんを介護しています。
この方は、90歳を過ぎていますが、年上の奥さんをお風呂に入れたり、トイレの介助をしたり、とても献身的に介護されています。
そして、自宅の庭には立派な畑が広がり、今も数多くの農作物を栽培され忙しい毎日を送っています。
ある日、そのご主人が「介護認定で、初めて要支援1をもらったので、私も訪問診療を受けさせてもらえませんか?」と自ら訪問診療を希望されたのです。
しかし、生活が自立されている方は訪問診療の適応にはならず、お断りすることになりました。
「年をとっても、訪問診療を受けなくてもよいほど元気なことは、とても喜ばしいことです!」 「これからも介護する側として、私たちと一緒に奥さんを支えていきましょう!」 「ご主人には、これからも元気に大活躍してほしいし、今回は訪問診療の対象から外れておめでとうございます!バンザ〜イ!」
といった具合に、かなりぎこちない励まし(?)をすることになりましたが、ご主人は「そうなんですか・・・」とがっかりした表情を崩しませんでした。
そこで、「万が一、ご主人に介護が必要になった時には、一生懸命訪問診療をさせてもらいます!」と固い約束を交わすことになりました。
こうして、いつ果たされるかわからない訪問診療の予約リストに、このご主人の名前が記されることになりました。このリストからご主人の名前が消えることのないよう祈りながら・・・。 |
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2019年10月3日(木) |
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第103話 笑顔を表現する |
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投稿:星野 |
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全英女子オープンゴルフで優勝した渋野日向子選手が、宮城県で開催された日本ツアーの大会に出場し、多くのファンが会場に詰めかけたそうです。
笑顔を絶やさない彼女につけられたニックネームがスマイルシンデレラ。
アイルランド代表に勝利したラグビー日本代表の選手が見せた「会心の笑顔」もそうですが、笑顔は人を幸せな気持ちにさせてくれます。
在宅診療でも、いつも笑顔で迎えてくれる患者さんが少なくなりません。
患者さんの笑顔は、部屋の雰囲気までも、ぱっと明るくしてしまう不思議な魅力を持っています。
このところ、私のカルテにも患者さんの笑顔を形容する言葉が増えてきています。
「とびきりの笑顔」 「素敵な笑顔」 「屈託のない笑顔」 「満面の笑顔」 「こぼれるような笑顔」 「弾けるような笑顔」
カルテにこの言葉を書き込んでいる時の自分は、いつの間にか頬が緩んでニヤニヤしているのは言うまでもありません。
この調子だと、「日向子のような笑顔」「スマイルシンデレラのような笑顔」が私のカルテにデビューする日が近いかもしれません。 |
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2019年9月30日(月) |
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第102話 楽天勝利の費用対効果 |
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投稿:星野 |
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楽天がクライマックスシリーズに進出し、普段から楽天を応援している方々にも喜びの声が聞かれました。
もし、楽天が常に優勝を義務付けられている常勝球団だったら、3位という順位にがっかりしたでしょうし、普段から勝ったり負けたりの繰り返しだからこそ味わえる喜びとも言えます。
ところが、この話題で盛り上がるどころかご立腹だった方もいます。
それは、勝利目前だったにもかかわらず、9回に無死満塁のピンチを招いてしまったことです。
「何やってんだ!」「ピッチャー変えろ!」
応援に熱がこもっていますね!
ところで、今年5月に各球団の総年俸が発表されましたが、楽天の支配下選手の平均年俸は12球団中4位。パリーグに限ればソフトバンクに次いで2位なのです。
こう考えると、楽天はクライマックスシリーズだけで満足してはいけないのです。
ちなみに、費用対効果の最も優れた球団は西武ライオンズでしょう。主力選手の流出が相次ぎ、巨人やソフトバンクの約半分の年俸でパリーグ優勝を勝ち取ったのです。
医療でも、費用対効果を意識した治療の選択が行われることが多いです。
同じ効果なら、費用の安い治療法が合理的と言えますし、効果の乏しい治療にお金を払い続けるのは非合理的と言えます。
そう考えると、楽天ファンの患者さんにとって、楽天の勝利はこれ以上ない費用対効果のある「治療法」と言えるかもしれません。
クライマックスシリーズ進出でホッとしている人も多いと思いますが、東北を元気づけるためにも、再び日本一を目指して頑張ってほしいですね。
ところで楽天の選手の皆さん、勝利する時は患者さんの血圧が上がらないよう9回は3者凡退でお願いします! |
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2019年9月26日(木) |
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第101話 サムライとなでしこ |
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投稿:星野 |
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ラグビーのワールドカップ日本大会が開幕し、日本代表の初戦を見た方も大勢いるのではないでしょうか。
ラグビーでは、代表選手資格が他の競技に比べて緩いので、外国出身の選手が多く違和感を抱く方もいると聞きます。
しかし、人種は違えど、長年日本に住み、日本人や日本の文化をこよなく愛する彼らが、日本代表として、日本のために体を張って戦い続ける姿は、one for allの精神をよく体現しており、本当に感動的です。
日本代表の練習環境には、鎧兜や刀が飾られ、サッカー日本代表を表すサムライブルー、野球日本代表を表すサムライジャパンと同様、チームとしてサムライ精神をとても大切にしています。
ラグビー日本代表の根底にあるサムライ精神とは何か?
旧5000円札に描かれた新渡戸稲造さんが記した武士道を、日本代表チームに置き換えてみると、サムライ精神とは「日本代表の戦士として守るべき道」であり、「いかなる試練や逆境を前にしても心静かに受け入れ、ストイックに落ち着き、チームへの忠誠心や愛国心を抱いで行動する」と解釈できます。
日本人の心を持った彼らの成功をずっと応援したいと思います。
話が変わりますが、介護の現場では、外国出身の女性が働いている姿を見かけることが少なくありません。
私が知る限り、彼女らの働く姿は、明るくとても献身的です。
ある老人施設では、いつも入所者のバイタルや状態を記したメモを渡してくれますが、文字がとてもきれいで、医者が書いた判読できないカルテや紹介状を数多く経験してきた私にとって感動的ですらあります(笑)。
彼女らの姿は、まさに清楚で奥ゆかしく内面の強さを持ったやまとなでしこ。 日本人の心を持ち、文字がきれいな彼女らの成功をずっと応援したいと思います。 |
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2019年9月22日(日) |
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第100話 敬老と敬労 |
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投稿:星野 |
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9月16日は敬老の日でした。
各地で敬老会が開かれたり、家族からのお祝いを受け取ったり、それぞれが楽しいひと時を過ごされたようです。
敬老の日になると、ご主人の介護を受けながら過ごしているDさん夫妻のことを思い出します。
ある敬老の日、ご主人は、地域の敬老会に出席するために外出していましたが、そこで出された赤飯を妻にも食べさせてあげたいと自宅に持ち帰り、夕食にお二人で仲良く召し上がったそうです。
結婚して以来、苦しい時も手を取り合って乗り越えてきた二人です。
どんな時も相手を忘れることなく、喜びも常に二人で共有されているのです。
この日はお二人にとって、お互いを敬い労いあう、良き“敬労の日”となったようです。
ということで、このブログもとうとう100回目。
無事“100歳”を迎え、「自分をほめてあげたい」という意味を込めて、一人で勝手に(寂しく?)自分自身を敬労しています。 |
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2019年9月17日(火) |