第302話 宇宙人 |
投稿:院長 |
私は、0歳〜4歳児までが通っているある保育園の嘱託医を担当しているのですが、新型コロナウイルス感染症の流行がようやく落ち着いてきたので、先日、保育園に定期検診(幼児検診・乳児検診)に行ってきました。 数年前、保育園から嘱託医の依頼が来た時、「私は小児科の専門ではありませんので、小児科の先生にお願いしたほうが良いのではないですか?」と逆に質問したところ、保育園から「この地域で家庭医療を専門にしているドクターを探していましたので、星野先生にお願いしたいのです」という返事をいただき、この言葉を意気に感じて引き受けることにしました。 嘱託医を引き受けるまでは、長い間、高齢者医療を中心に、ほぼ成人ばかりを診察していたので、若い頃に小児科研修をしていた時に学んだことを思い起こしたり、改めて小児科の専門書を読んだりして検診に臨むことにしました。 この保育園の園庭には、砂場はもちろん、土を盛り上げて作られた遊具が数多く設置され、園児は職員が見守る中、裸足で元気に遊び回っていました。 子供が太陽の下で土に直接触れることで、五感を刺激して感受性を高め、コミュニケーション力、免疫の調整力を養うとされており、園児の成長を伸び伸びと支えるという保育園の理念が伝わってきました。 実際に園児を健診してみると、どの園児も表情が豊かで、肌はピチピチとして艶があり、歯もちろん、口の中がとてもきれいに清潔保持されているのでびっくりしました。 この日は30名以上の検診を行い、男児2名の停留睾丸を発見しました。これは睾丸が陰嚢に十分に降りてきていない状態で、不妊症の原因になったりすることがあり、泌尿器科の専門医のもとで十分な経過観察や治療が必要になります。日本の少子化対策にちょっぴり役立てたのではないかと思います。 ただ残念なのは、感染対策のため防護服姿で検診しなければいけないことです。子供たちにとって、私はどこかの惑星から来た「宇宙人」に見えたことでしょう。私の姿を見た途端、泣き叫んだりする園児もいれば、愛嬌たっぷりに話しかけてくる度胸ある(?)園児もいて反応は様々でした。 家庭医療は、今まで社会を支えてきた命、これから将来社会を支える命、今社会を支えている命など、あらゆる年代の人生に関わることが醍醐味の一つだと改めて感じました。 卒園を直前に控えた子供たちとは、これが最後の検診になり、少し寂しい気がしますが、早くコロナが収束し、私自身は一刻も早く宇宙人を卒業したい、そう思いました。 |
2023年2月23日(木) |
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