第296話 夢と現実の力 |
投稿:院長 |
当院の在宅医療では、紹介される四分の一の患者さんが進行がんと診断され、在宅緩和ケアを目的として主に仙台市内の総合病院から紹介されてきます。 患者さんの症状は様々で、医療用麻薬をはじめ、いくつかの鎮痛剤を組み合わせて投与しないと苦痛が十分に取り除けない方もいれば、全く鎮痛剤を必要としない方もいます。 そして、症状の程度は、病変の場所やその広がり、それ以外の基礎疾患や年齢、元来の性格や精神状態、信仰、生活環境、周囲との人間関係などいろいろな要因に左右されているように思います。 ある患者さんは、通常ならとても苦痛を感じてもおかしくない病状なのですが、ベッドで休まれている時の表情はとても穏やかで、診察では明るいトーンで話が弾みます。 この患者さんによれば、なんと、今まで悪夢を一度も見たことがなく、毎日見る夢の中に出てくるのは食べ物ばかりで、夢の中でその味を堪能するのだそうです。 この患者さんには、科学を超越した不思議な自己防衛力が働いているかのようです。 さらに特筆すべきは、この患者さんを介護するご主人も、患者さんにも増して明るい気さくな方で、夢の中に出てきた食べ物をすぐに用意して、患者さんに食べさせてあげるのです。 つまり、通常の夫婦愛を超越した家族力で、患者さんの夢はいつも正夢(ひと夢で二度おいしい)になるのです! きっとクリスマスの日には、たくさんのクリスマスケーキを味わうに違いありません。 夢と現実の中の両方の力が、今日も患者さんを支えています。 |
2022年12月17日(土) |
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