仙台市若林区の診療所  やまと在宅診療所あゆみ仙台 【訪問診療・往診・予防接種】
ホーム > 隨ャ290隧ア


 第290話 蕎麦の味わい
投稿:院長

Nさんは、地元では有名な蕎麦屋の店主をされていましたが、総合病院で進行性の病気と診断され、在宅診療を受けることになりました。

店の2階にある自宅で療養している時も、店のことが頭から離れず、お客さんがきて繁盛しているかモニターで確認する毎日でした。

しかし、Nさんの心配は無用で、Nさんのそば職人としての味を、奥さんや従業員が立派に受け継いでおり、店は常連のお客さんが途絶えることはありませんでした。

Nさんは、「自分の最後の望みは、この家で最期まで過ごすことで他に思い残すことはない」「逝くときは店の営業に差し支えないよう営業時間外に逝きたい」と希望されました。

身体が不自由になっても、しんどいことがあっても、常にユーモアを忘れず、お客さんを大切にしてきた通り、他人に対する思いやりや感謝を欠かしませんでした。

食事が満足に取れなくなっても、自家製の蕎麦湯を味わい、最後となった入浴も気持ちよく入れましたと嬉しそうでした。

そして、ご家族が少し目を離した隙に、Nさんは静かに息を引き取っていました。それは、まさにNさんが望む営業時間外でした。

Nさんが残した蕎麦の味は、これからも蕎麦を味わった人の心の中で生き続けていくでしょう。

そして、「今度、蕎麦を食べに来てください」とNさんと交わした約束を果たすべく、私もそのうちの一人になるつもりでいます。


2022年10月19日(水)

<< 第289話 くだもの
2022.10.9
第291話 電話の相手とは? >>
2022.10.27



はじめのページに戻る



やまと在宅診療所あゆみ仙台
〒984-0042 宮城県仙台市若林区大和町3-10-1 内ケ崎ビル2F
022-766-8513

Copyright (c) Sendai Home-care Support Clinic All Rights Reserved.