第284話 ひなたの道 |
投稿:院長 |
当院で担当している患者さん宅を訪問した時、患者さんが若い頃、外国人と一緒に収まった写真が目に留まりました。 この患者さんは、昔、通訳で活躍された方で、よく話を聞けば、ジャズ歌手のルイ・アームストロングが来仙した際に、仙台市内を案内した時の写真だったのです。 この話を聞いた時、今年4月まで放送されていたNHKの朝ドラ「カムカムエブリバディ」を思い出しました。 この物語の中で、戦時中、ルイ・アームストロングの名曲、「on the sunny side of the street(ひなたの表通りで)」に魅せられた夫婦が、自分たちの子供に、将来、世界を自由に行き来できるような、そんな大人に成長してほしいと、ルイ・アームストロングにちなんで「るい」と名付けたのでした。 「るい」は成長し、やはり on the sunny side of the streetの曲に魅せられたトランぺット奏者と結婚し、その子供に、将来、このジャズの歌詞にあるような、ひなたの道を歩んでほしいという願いを込め、「ひなた」と名付けました。そして、ひなたは、日米の懸け橋となるような立派な通訳に成長したのでした。 同じ日、初めての診察のため、別な患者さんのご自宅を訪問したのですが、夏休み中の小学生のお孫さんと、リビングで会うことができました。 ご家族によれば、このお孫さんは、身体が不自由になった患者さん(おじいさん)のために、毎日、自宅で言葉のリハビリを一生懸命に担当しているとのことでした。 面談中、ご家族がこのお孫さんの名を呼びました。その名はなんと「るい」君。 将来、このお孫さんは、弱者の味方になるような立派な大人に成長していくに違いないと確信したのでした。 涙線(るいせん)が緩むような感動と、偶然とも思える展開に、その日は心地よい気分で過ごすことができました。 |
2022年8月13日(土) |
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