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 第279話 徳川家康のような人生
投稿:院長

戦国大名の中で、天下統一に向かった織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の3人はよく比較されますが、中でも、革新的なことを行った織田信長の人気が一番高いようです。

一方、徳川家康は他の二人に比べて地味で、必ずしも人気が高いとはいえないのですが、戦国大名の中で最後に天下統一を成し遂げたのは紛れもない事実で、最も成功した大名と言えるでしょう。

徳川家康にあって、他の二人にないものを考えると、成功の秘訣がよくわかります。また、何か事業を行うときには徳川家康の生き方というのはとても参考になるのです。

まず、第1に、不遇の幼少時代から彼を支えた家臣団の存在です。家康と苦楽を共にし、家康に対する忠義心の厚さと勇猛さで知られたいわゆる「三河武士団」とは強固な絆でつながっていました。これは家臣の明智光秀に裏切られた織田信長や、農民から下剋上で這い上がった豊臣秀吉にはなかったもので、何か重大な決断を下すときには家臣の意見を尊重したそうです。トップダウンで物事を決めていく織田信長とは最も大きな違いの一つです。

2に、たとえ、自分に謀反したり敵対した者に対しても、咎めることなく登用したことです。かつて敵対した今川氏や武田氏らの家臣団を大量に自分の家臣として取り込み、地元に精通している者に領国経営させることで、混乱なく拡大した領地を掌握することが可能になりました。また、武力だけでなく、知力や政治力に長けた家臣を適材適所に登用することで、徳川政権をより強固なものにしました。江戸幕府を開いてからすぐに将軍職を2代目の秀忠に譲ることができたのも、有能な家臣団なしではありえませんでした。

3に、逆境をもチャンスに変える忍耐力と創意工夫です。豊臣秀吉が北条氏を滅ぼした後、秀吉から、今まで治めていた三河などの5か国から、関東への移動を命じられ、苦労して手に入れた土地を手放さなくてはなりませんでした。当時の江戸は未開拓で湿地帯が多く、人が住めるようになるには相当な土地開発が必要でしたが、江戸城を起点に水路を整備して水運が活発な街づくりをした結果、江戸はその後に世界最大の都市に発展し、今の東京の基盤となりました。

4に、自分の健康管理(食事や漢方薬に精通)に気を配り、当時としては破格の健康長寿(75歳)を実現したことです(ちなみに織田信長は49歳、豊臣秀吉は62歳で亡くなっています)。当時の平均寿命が50歳前後ということを考えると、現在で言えば120歳前後まで生きたことになります。家康は関ケ原の戦いに勝利し、江戸幕府を開きましたが、それだけでは徳川政権はまだ盤石とは言えませんでした。それは、大阪城には、豊臣秀吉の息子、秀頼が豊臣の家督を継いでおり、家康は豊臣の家臣の一人であるという見方もあったためです。しかし、徳川と豊臣の間で政権争いが起こった場合に、豊臣に味方する可能性があった加藤清正、福島忠則、浅野長政らの有力大名(すべて家康よりも年齢がが若い)が、関ケ原の戦いの後、次から次へと亡くなり、大阪の陣の頃には、豊臣に味方する有力大名が一人もいなくなっていました。そして家康自身は、1615年に大阪夏の陣で豊臣氏を滅亡させ、武家諸法度、禁中並公家諸法度を交付し、年号を、150年近く続いた大きな戦乱が終わり、天下が平定したことを表す「元和」と改め、翌1616年に75歳でその生涯を閉じることになります。

ここで、驚くべきことは、大阪の陣では自らも出陣し、天下統一のすべてを成し遂げ、徳川政権が盤石となったことを見届けてから亡くなっていることです。家康がもっと早く命を落としていたら、260年余り続いた江戸幕府はなかったかもしれません。

有名人や知人が道半ばで、病気にかかったり亡くなったりするのを聞くにつれ、家康のように健康で長生きすることが、何か事をなす際に、大きな資本となり、すべての原点になりうるのだと改めて感じています(人の健康を預かっているはずの医師にとって、最も頭の痛い大きな課題の一つです)。

訪問診療では、自宅や施設でお看取りをさせてもらうことも多いのですが、人生やりたいことをやり切って満足な人生だったと振り返ることができる人が少なくありません。そして、そのような方に関わることが、私たちの励みの一つになっています。

いよいよ明日から、あゆみホームクリニック仙台からやまと在宅診療所あゆみ仙台として再出発します。しかし、患者さんが晩年の時を、家で康らか(やすらか)な生活を送っていくことができるよう支えていくというあゆみホームクリニック仙台の理念は継承していきます。どうぞよろしくお願いいたします。 


2022年6月30日(木)

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