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 第272話 もう一人の主役
投稿:院長

当院では、癌などの終末期の患者さんが人生の最期の時を自宅で過ごせるよう支援していますが、もともと通院していた病院に再入院し、最期の時間を病院で過ごすことがしばしば生じてきます。

実は、終末期の患者さんが、自宅での生活が困難になってしまう理由として、患者さんの病状が悪化して十分に苦痛を緩和できなかったということ以上に、同居している家族の介護負担が大きな要因になっています。

介護は複数で交代しながら行うことが理想ですが、介護者が一人だけということも多く、また、近年は病院で亡くなる人が増え、自宅で家族の看取りを経験している人が減少し、介護の経験が不足しているのです。

例えば、普段から身の回りのことをすべて自分で行い、家族には一切手出しをさせないような自立心の強い患者さんの場合、病状が悪化して自立した生活が困難になってくると、今までほとんど介護に関わっていなかった家族が、本人にどのように接したら良いのか戸惑うことになります。またその一方で、普段から家族への依存心が強い患者さんの場合、家族に対して昼夜を問わない様々な要望が出されて家族が疲弊してしまうケースもあります。

さらに、家族の責任感や不安感が強く、患者さんを一人にしておけないと考えている場合も、介護の負担が次第に大きくなり疲労が蓄積してしまいがちです。

いくら親しい間柄であっても、適切な距離感を保って介護することが大切で、患者さんが自分でできることはそれを促し、本当に困った時に手助けするくらいのほうが丁度良いのです。

孤独で出口が見えない介護、いくら頑張っても誰からも称賛されない介護ほど辛いものはありません。

介護者を孤独にさせないよう、患者さんに関わる医師、看護師、ケアマネージャー、介護士が、家族を時には励まし、時には一緒に悩みながら、けして完璧な介護を目指す必要はないと伝え、サポートすることが大切です。

在宅医療は、それぞれの人生が交錯するドラマ。

そのドラマでは、患者さんだけでなく介護者も大切な主役で、けして「劇団ひとり」にしてはいけません。

もう一人の主役が自分のペースでいきいきと過ごせるよう、一生懸命に脇役の役目を果たしていきたいと考えています。


2022年4月25日(月)

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