第268話 再会 |
投稿:院長 |
先日、ある患者さんを初めて診察したときのことです。 自宅を訪れてみると、玄関には見覚えのある阪神タイガースのユニフォームが飾られていました。 実は、数年前に私が訪問診療していたある男性患者Hさん(今はお亡くなりになっています)が阪神タイガースの熱烈なファンで、奥さんが今回の患者さんだったのです。 Hさんは進行性の難病を抱えながらも、診察ではいつも礼儀正しく接してくださり、その傍らにはいつも奥さんの姿があり、Hさんにとってそばにいるだけで安心できる存在でした。 室内の雰囲気は当時のままで、Hさんを診察したソファーや病状説明したテーブルがとても懐かしく感じられました。 ベッドの患者さんにお会いすると、当時の穏やかな表情そのままです。ご家族が献身的に介護されている姿も変わっていません。 「ご主人を診察していた医者です。またよろしくお願いします」「こちらこそよろしくお願いします」と和やかな雰囲気で挨拶を交わすことができました。 訪問診療では、出会いと別れの繰り返しです。 患者さんとお別れをするたびに「自分の診療は、患者さんやご家族にきちんと受け入れられたのだろうか?」といつも自問していますが、担当医として2回目の指名をいただくことは、大変光栄なことだとあらためて感じています。 話が変わりますが、あるテレビ番組でインタビューを受けた看護師が、「自分が患者だったら自分の勤めている病院で絶対に治療を受けたくない!」と告白していました(笑)。 医者は、 「職員が患者だったら、自分の診療を進んで受けてくれるだろうか?」「自分の家族が患者だったら、自分の診療を進んで受けてくれるだろうか?」「自分が患者だったら、自分の診療は信頼できるものだろうか?」 という視点が常に必要だと思っています。 そして、「自分が歳を取って身体が不自由になった時、こんな雰囲気で暮らしてみたい」と思えるような患者さんやご家族との出会いに感謝しています。 まずは、阪神タイガースが、天国のHさんに熱烈に応援してもらえるような活躍を期待しています! |
2022年3月23日(水) |
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