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 第266話 大義名分
投稿:院長

ロシアのウクライナ侵攻に心を痛めています。

今回、ロシアのプーチン大統領が掲げたウクライナ侵攻の大義名分は「ウクライナに迫害・虐殺されているロシア系住民を開放する」というものでした。

過去を振り返ってみます。

太平洋戦争での日本の大義名分は「欧米に植民地化されたアジアの国々を開放し、日本が中心となって新しい経済圏、つまり大東亜共栄圏を打ち立てる」というものでした。

日清戦争、日露戦争と戦勝国となり、中国戦線で領土を拡大する軍部の暴走を政治の力で抑えることができず、メディアの力を利用して国民が熱狂する中、無謀な戦争に突き進んでいきました。

ナチスドイツが台頭し、ヨーロッパで第二次世界大戦が勃発した時のヒトラーが掲げた大義名分は「強いドイツ民族の復活させる」というものでした。

第一次世界大戦でドイツは敗戦国となり、多くの領土を失い、多額の賠償金や世界恐慌で国内経済が破綻する中、ドイツ国民の優秀さを説き、巧みな演説と失っていた自信と誇りを取り戻すヒトラーの政策に国民が熱狂する中、ユダヤ人の迫害や戦争に突入していきました。

湾岸戦争が始まった時の米国の大義名分は「テロ支援国家であるイラクの大量破壊兵器を無効にして武装解除する」というものでした。同時多発テロを受けた多くの米国国民の支持を受けて開始された戦争でしたが、結局、両国民に多くの犠牲者を出したにもかかわらず大量破壊兵器は発見されませんでした。

国のリーダーは、戦争する時に必ず大義名分を掲げますが、戦争は他国民だけではなく自国民の犠牲者も避けることができません。国民に求められることは国に統制されてしまったメディアの情報を鵜呑みにすることではなく、リーダーが適切な政治決断をしているのか熱狂ではなく冷静に見守り、声を上げることです。熱狂は時に冷静な判断を犠牲にしてしまいます。

そして、リーダーに求められることは、自国民の利益を守ることはもちろん、国際秩序を守り、あらゆる外交努力を行い、多くの尊い命を犠牲にする戦争を回避する強い姿勢です。

今回のウクライナ侵攻では、必ずしもロシア国民の多くの支持を受けているようには思えません。また、ウクライナに派遣されているロシア兵の戦意の低さも指摘されています。

過酷な環境の中で生活し、国のために勇敢に戦うウクライナの人々に思いを寄せるとともに、国のリーダーが掲げた理不尽な大義名分のために命をかけて戦線に送り出されているロシア兵がどんな心理状態で戦っているのか考えると、とても心が痛みます。

早い戦争の終結を願ってやみません。


2022年3月8日(火)

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