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 第249話 怒りの矛先
投稿:院長

日常生活では、様々な怒りの感情が沸き起こってきます。


喜怒哀楽という言葉にある通り、本来、怒りというのは正常な人の感情の動きなのですが、怒りの感情を上手く処理できないと勉強や仕事に集中できないばかりでなく、モチベーションが低下したり、場の雰囲気を悪化させたり、対人関係に悪影響を及ぼしたりして、負の側面が大きくなってしまいます。


怒りが発生しても、その感情を適切にコントロールしようとすることを「アンガー(怒り)マネジメント」と呼び、それを実践することで対人関係をより建設的なものにすることができます。


アンガーマネジメントの具体的な方法には、「6秒待つ」、「怒りを点数化してみる」、「すべきという価値観を捨てる」、「その場から離れる」など、いろいろな方法が挙げられていますが、自分に合う方法を選んでいくことが大切です。


自分自身、感情を害して怒ったことは少なからずありますが、相手を打ち負かすことが怒りの目的になってしまうと、たとえ議論に打ち勝ったとしても、それを引きずり、眠れなくなったり、ストレスを感じながら日々を過ごすことになってしまうので、自分にとってもこの怒りの感情とどう付き合えばよいのか課題の一つでした。


私が過去に一緒に仕事した人の中には、怒りの感情が恨みや憎しみに変化し、他の同僚を巻き込んで自分達にとって都合の悪い同僚や患者さんまでも報復の対象にしたりと、怒りが歪んだ形に発展してしまい、まったく手のつけられない人もいました。


怒りは、そのマネジメントを誤ると、人間関係を壊し、組織を壊し、社会を壊してしまうのです。


カリフォルニア大サンタバーバラ校の中村修二教授は、青色発光ダイオードでノーベル物理学賞を受賞した時の記者会見で、研究の原動力について「アンガーだ。今も時々怒り、それがやる気になっている。怒りがすべてのモチベーションだった。怒りがなければ何も成し遂げられなかった」と述べています。


中村教授のように、怒りを破壊するためでなく、人や社会にとって有益なものにするエネルギーに変えられたならどんなに素晴らしいことでしょう。


感情を害した時、「なんでわかってくれないんだろう?」「何故こんな理不尽な扱いをされなくてはいけないのだろう?」という思いから、怒りの感情が沸き起こってきます。


しかし、どんなに正論を述べたところで、感情的になった時点で、相手が自分のことを100%理解してくれるのはなかなか難しいかもしれないし、「なんで?」とか「何故?」とか被害的な感情にとらわれているばかりでは何も前進しません。


その場で、相手が自分のことをわかってもらえないと感じたら、あえて冷静さを取り戻すまで距離を置くようにしています。


しかし、冷静になった後も価値観が違いすぎて分かり合えそうもなかったら、先に進むために、淡々と自分が今やるべきことに集中します。


先に進むために、たくさんの壁が待ち受けていますが、壁に衝突して傷つきながら進むのではなく、壁に衝突しないよう、まるで渋谷のスクランブル交差点の人混みの中を歩くようなイメージで進むべき方向を定めながら進むのです。


そして、その行き着く先は人にとってより建設的な世界です。


自分の怒りなど、森羅万象(この世に存在するあらゆる物や現象)の中ではとてもちっぽけなものです。


自分が富士山の山頂に立った時のことを想像してみます。透き通るような青い空、眼下に見える雲海や雄大な景色を前にした時に、そんなちっぽけなものにとらわれているのがバカバカしく思えてくるかもしれません。


自分が宇宙飛行士になって宇宙船に乗っている時のことを想像してみます。地平線の彼方に見える太陽や青い地球を目の当たりにした時に、そんなちっぽけなものにとらわれているのがバカバカしく思えてくるかもしれません。 


2021年10月27日(水)

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