第217話 生活者の視点 |
投稿:星野 |
患者さんの中に、入院先の病院の生活に馴染めず、半ば強制退院となった方がいました。
ある病気のために入院し、後遺症が残ったため継続的にリハビリが必要でしたが、医師や看護師の指示に従わなかったというのがその理由です。
入院先の病院では、この患者さんの対応に苦労し、当院に送られてきた事前情報にも患者さんの入院中の言動が記載されており、初めて自宅を訪問した時は、少し緊張しながら診察を行いました。
しかし、診察を重ねて患者さんの考え方、行動哲学を知るにつれて、病院での言動にはきちんとした理由があったことを知りました。
それは、認知症の妻を残し長期間の入院生活が出来なかったのです。
「妻や自分自身の体の事を一番よく知っているのは自分だ」 「自分には妻を介護する責任がある」 「自分には自分自身の体を手入れする責任がある」 という強い信念で、妻の介護を行いながら在宅リハビリに取り組んだ結果、今では車椅子から立ち上がり、自宅の中をゆっくり歩けるようになりました。
この自己責任という考え方は、子供たちの自主性にも及び、子供たちに「勉強しなさい!と言ったことは一度もない」のだそうです。
私にとって耳が痛い言葉です(笑)。
医師や看護師の指示に従うか従わないかで患者さんの良し悪しを決めてしまうのは病院の中の理屈です。
このような患者さんを生活者の視点から見ることにより、全く別な人物像になってしまうことを知りました。
自分自身に対して、「患者さんを通して勉強しなさい!」と心の中で語り掛ける毎日です。 |
2021年3月23日(火) |
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