第211話 老人施設での禁句 |
投稿:星野 |
老人施設では、入所者の帰宅願望による言動に対応しなくてはならない時があります。
そのような場合、入所者は「家に帰る」と言って落ち着きが無くなり、時には外出しようとするので、職員は注意を払いながら話を聞いてなだめたり、時には一緒に外を歩いたりして対応しています。
したがって、診察では自宅を思い出すような会話は厳禁です。
ある患者さんの部屋には、自分が嫁入りいた時の古いタンスが置いてあったのですが、患者さんにうっかりそのことを聞いたら、「家に帰りたい」と言い始めて失敗したことがありました。
また、ある患者さんは、昔の仕事のことについて聞いたら、「仕事に行く」を言って身支度を始めて失敗したこともあります。
さらに、秋田出身の別な患者さんに対して「秋田は今頃雪が深いでしょうね。雪は好きですか?」とうっかり聞いてしまい、職員の表情が曇ってしまったことがあります。
私も内心、「失敗した」と感じて、どんな答えが返ってくるのか固唾を飲んでいたら、「雪は嫌いです」
私は「そうですか!私も雪が嫌いです。今はここにいれば雪かきする必要もないので安心ですね」と何とかその場を取り繕うことができました。
患者さんが「秋田の雪が大好きです」ということにならなくて良かった・・・。
私の頭の中では、あきたこまち、ハタハタ、きりたんぽ・・・秋田の特産品や名産がぐるりとイメージされたのですが、今日ばかりは心の中に閉じ込めておくことにしました。 |
2021年2月10日(水) |
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