第240話 在宅医療をきっかけにする |
投稿:院長 |
患者さんの中には、今まで治療を受けていた総合病院から紹介を受けて、在宅医療を受ける方もいます。 しかし、「今までの主治医から見放されてしまった」とか、「総合病院から離れるのが心配」とか、「家族が支えていけるのか不安」などとネガティブに考えてしまう場合があります。 そんな時、私がお伝えするのは、「在宅医療をきっかけにする」「病院ではできないことを実現する」ということです。 もちろん、在宅医療では病院のように高度な医療機器や多くの人員を備えているわけではなく、その点では見劣りするかもしれませんが、むしろ自宅でしか実現できないこともたくさんあるのです。 ●自宅の良さを再認識できる 自宅という空間が自分にとっていかに大切なのか再認識する“きっかけ”になります。特に先祖代々からの家や、自分で建てた家なら、なおさら愛着があるものです。 ●家族の良さを再認識できる 実家から離れた子供たちが患者さんのもとに集まり、しばらくできなかった家族の会話ができるようになり、家族の絆を再認識する“きっかけ”になります。 ●薬を一元化できる 今まで複数の診療科から数多くの薬剤を処方されていた場合は、訪問薬剤師と協力しながら薬剤の管理を一元化し、必要な薬剤のみに整理できる“きっかけ”になります。薬の内容を見直したり整理することで体調が回復する人もいるのです。 ●相談窓口が増える 在宅医療では、自宅を訪問するのは医師だけではありません。訪問看護師や薬剤師、ケアマネージャー、介護士と連携していますので、数多くの支援者(応援部隊)と出会う“きっかけ”になり、困ったときに気軽に相談できる窓口が増えるのです。 ●恩返しができる 患者さんの大好物を作ってあげたり、語り合ったり、体を擦ったり、体を拭いたり、今までなかなかできなかったスキンシップができるチャンスなのです。今まで家族のために尽くしてくれた恩に対して、“病院ではできない”自分なりの「倍恩返し」をしましょう! ●自分のペースで生活できる 病院のように、日々のスケジュールが決まっているわけでなく、午後6時に寝ることも(笑)、夜ふかしすることもできるし、食事に時間がかかっても配膳が取り下げられることはありません!他の患者さんに気兼ねすることなく、時代劇を見たり、楽天イーグルスを応援したり、大好きな氷川きよしの歌を聴いたり、自慢の庭に咲いたバラの花を眺めたり、“病院ではできない”自分のペースで生活することができます。 ●制約が緩い 病院では、少しでも危険を回避することが優先されるので、誤嚥を起こしやすい人は食事制限を受けたり、転倒しやすい人はトイレ歩行が禁止されることがありますが、自力で食べたりトイレ歩行することで患者さんの自尊心や尊厳が保たれている場合は、家族の介護負担や安全対策を考慮しながら、可能な限り本人の希望が叶えられるように“病院ではできない”を支援していきます。 ●会いたい人に面会できる 感染対策はきちんと行う必要がありますが、“面会が禁止された病院ではできない”大切な人との面会ができます。もちろん会いたくない人には、門前払いもできます! 以上、病院を引き合いに出して在宅医療の良さをアピールしましたが、その一方で、病院には在宅医療にはない良さがあります。在宅医療と病院医療は対極にあるわけではなく、互いに協力して補い合っていくパートナーなのです。しかも、在宅医療が開始されると紹介元の病院と縁が切れてしまうわけではありません。病状が悪化したり、患者さんが希望すれば、必要な情報をやりとりしながら病院で診察を受けることができるし、在宅医療で病状が回復して身の回りのことができるようになったら、再び外来に通院することも可能なのです。 在宅医療の中で、それぞれの患者さんに対して何ができるのか一緒に考えて行きましょう! |
2021年8月30日(月) |
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