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第407話 贈る言葉 |
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投稿:院長 |
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Sさんは90代のとても物静かな男性です。 活発で明朗な奥さんと二人暮らしをされていますが、Sさんの診察でもっぱら話をするのは奥さんで、本人からめったに言葉が出てくることはありません。 Sさんは中学生の頃に、足に大きな外傷をきっかけに骨隨炎を発症し、それ以来、傷の処置が必要になりました。 70年ほど前にお見合いしてから、奥さんにはこの古傷のことを打ち明けないまま結婚したそうなのですが、結婚後、奥さんがこの古傷を毎日毎日、処置することになりました。 診察では、奥さんからは出てくる言葉はSさんへの愚痴ばかりです。 「この人は、傷のことを隠して結婚したのね。傷のことを知っていたら一緒になっていなかったのにね・・・」 「少しは動いてくださいと言っても、ずっと座ってばかりなんだから・・・」 「何言っても黙っているばかりなんだから・・・」 私は「Sさんは90歳を過ぎても、身の回りに事は自分でできているし、傷の処置をしたり、家事をする以外は、奥さんの手を煩わすことがなく、かなり優秀な旦那さんなのですよ」 「物静かな旦那さんだからこそ、話し上手な奥さんと釣り合いがとれて平和なのですよ」 とすかさずSさんを擁護します。 しかし、奥さんの言葉とは裏腹に、クリスマスには、食卓にショートケーキが2個そっと置いてあったことを私は知っています。きっと、2人でささやかにクリスマスを過ごしたのでしょう。 そして、明治ヨーグルトR-1のドリンクタイプが必ず2瓶配達されていることを私は知っています。きっと、お互いの健康を気遣いながら2人で毎日飲んでいるのでしょう。 さらに、市販の総合感冒薬・パブロン錠が入っている瓶が2個、居間のテーブルの上に置いてあることを私は知っています。きっと、仲良く風邪を引いた時?には、風邪薬が足りなくならないように二人分が用意されているのでしょう。 ということで、室内の状況証拠から、2人は生活の全てを分かり合い、とっても仲良く暮らしていることがよくわかるのです。 そして、ある日の診察では、ついに「この人を置いて逝けないので、一緒に長生きしています」と奥さんの口から本音がポロリ。 これは、男子にとって、妻から贈られた最高の言葉に違いありません。 そして、この言葉を聞いたSさんの眼には一筋の涙がポロリ・・・。 ということで、Sさん家の家庭内不和疑惑?は何事もなく消え去ったのでした。 Sさん、これからも世話の焼ける最高の夫であり続けてください! |
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2026年3月14日(土) |
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