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 第397話 オープンカー
投稿:院長

訪問診療では、ご主人の介護にとても献身的な奥さんが少なくありません。


夫が病状の悪化で入院したり、種々の理由で老人施設に入所した時、家族と離れて過ごすことになって寂しい気持ちを解きほぐしてくれるのは、家族の面会です。


離れ離れになった時、住み慣れた自宅では当たり前のような存在が、実は自分にとって最も大切だったと気付かされるのは、夫だけではありません。


今はお亡くなりになったKさんが入院した時、奥さんは自宅から片道10q以上離れた病院まで、大切な人と会うために、雨の日も風の日も雪が舞う日も毎日毎日通い続けたそうです。


Kさんが自宅に退院した日、初めてKさんの自宅を訪問しました。


Kさんは、ほとんど話すことができない状態でしたが、奥さんはKさんの帰宅がとても嬉しそうです。


奥さんと話をしていると、毎日病院に通い続けたことが話題となりました。しかし、奥さんは車の免許を持っていないので、きっとバスを乗り継いでいたのだろうと思って聞いてみると、奥さんから、屈託のない笑顔で「オープンカーです!」と答えが返ってきました。


えっ、オープンカー?


それは・・・実は自転車のことだったのです!


奥さんが小麦色に日焼けしているのは、毎日毎日夫に面会するために自転車で病院に通い続けたからだったのですね〜。


初めての診療が終わり、Kさんの自宅を後にする時、玄関のドアの前に止めてあった「オープンカー」が目に入りました。


少しさび付いて、けして新しくはないこの自転車が、Kさん夫妻の絆を結び付けていたのかと思うと、とても感慨深くなりました。


話は変わりますが、今、私は、地球温暖化に対して個人でできることとして、仙台市内の移動はできるだけ自家用車を使わないようにしています。


通勤は、もちろんKさんの奥さんを見習って、子供が中学校時代に使って乗り古した「オープンカー」。


Kさんの奥さんの十分の一の距離を、このオープンカーで季節の移り変わりを感じながら走っています。親子の絆を確かめるように。


2025年11月29日(土)

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