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 第394話 身近に感じるノーベル賞
投稿:院長

今月、スウェーデンのカロリンスカ研究所よりノーベル賞受賞者が発表され、日本から生理学・医学賞には、坂口志文さん(大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任教授)と、化学賞には北川進さん(京都大学副学長)さんが選ばれました。おめでとうございます!


ノーベル賞受賞者に共通するのは、時には批判を浴びたり、孤立しながらも揺るがぬ信念に基づいて問題を追求し続けた粘り強さ、忍耐力とだと思います。日本人としてとても誇らしいです。


ノーベル賞は、人類の営みに対して多大な貢献をした研究者に贈られる賞です。


お二人の研究も、これからの臨床や地球環境に多大な恩恵をもたらすのではないかと期待されています。


やまと在宅診療所あゆみ仙台でも、ノーベル賞の恩恵を感じられることが度々あります。


今から遡ること10年前に大村智さん(北里大学特別栄誉教授)がノーベル医学生理学賞を受賞されましたが。大村先生は、様々な寄生虫に対して高い有効性を示すイベルメクチンという薬剤を開発しました。当時、アフリカを中心とする地域で多発していた寄生虫病オンコセルカ症やフィラリア症(象皮症)に対して、北里研究所から何億という人々にイベルメクチンが無償供与された結果、一部に地域ではオンコセルカ症の撲滅を達成するなど、この地域の医療に対して多大な貢献をされました。


先日、当院が担当するGさんの診察をしていた時、ご家族より「便から虫が出てきました」とスマートフォンで撮影された1枚の写真を見せられました。そこには便に混じって白いミミズのような線虫(回虫)と思われる寄生虫が写っていました。実は、医師になってからこのような寄生虫を見るのは初めてで、とてもびっくりしましたが、その瞬間、私の中には大村先生の名前と顔が頭に浮かびました。


早速、商品名「ストロメクトール」として流通しているイベルメクチンをこの患者さんに処方して、1週間の期間を置いて2回服用してもらったところ、それ以降、この寄生虫の排泄がピタリとなくなってしまったのでした。


さらに、それ以前には、ある老人施設で疥癬(かいせん)という寄生虫の皮膚症状が流行った時、昔はあらゆる手段を使っても駆除に苦労していたこの寄生虫が、イベルメクチンをたった数回服用するだけですっかり完治してしまったので、それ以来、イベルメクチンは私の中では絶対忘れられない薬剤の一つになりました。


一方、日本を代表する作家・村上春樹さんが、今年もノーベル文学賞に選ばれませんでした。


私をはじめとする一部の大ファンにとってどうして受賞できないのか?「腹の虫が収まらない」という残念な結果となりましたが、イベルメクチンを通して発展途上国の多くの人々の命とやまと在宅診療所あゆみ仙台の患者さんを救った大村先生の偉大な業績を身近に感じて、心の慰めにしているところです。


2025年10月31日(金)

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