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 第390話 世界陸上
投稿:院長

Mさんは、進行がんと診断された80代の男性です。


有効な治療方法がなく、余命宣告を受けたMさんは、身の回りのことを整理するために一刻も早く奥さんの待つ我が家へ帰りたいと強く希望されました。


帰宅後のMさんは、慢性的な腸閉塞のため、食事をとることができませんが、腸の浮腫を和らげる点滴を受けながら、日中はシャワーを浴びたり、リビングで過ごすなど静かでゆったりとした時間を過ごされました。


Mさんが、自宅で穏やかな時間を過ごすことができたのは、奥さんの包み込むような温かさと献身的な介護の賜物です。今まで家族のために尽くしてくれたMさんに少しでも恩返ししたい・・・。そんな気持ちで、訪問看護のサポートを受けながら、慣れない坐薬の挿入でもすぐにできるようになり、Mさんを支え続けました。


Mさんは陸上競技を観戦することが大好きで、913日に東京で開幕する世界陸上を心待ちにしていました。それを聞いた私は、宮城県出身で男子200mに出場する鵜沢飛羽(うざわとわ)選手、女子マラソンの佐藤早也伽(さとうさやか)選手ことを紹介しました。


Mさんの残された体力を考えると、世界陸上の開幕まで命を繋ぐことができるのかぎりぎりのタイミングでした。


そして、913日に世界陸上が開幕しました。Mさんは、男子35q競歩で日本人第一号となる銅メダルを獲得したことよりも、心待ちにしていた男子200mと女子マラソンがまだ始まらないことをとてもがっかりされていたそうです。


その後は、次第に意識が遠のき、ベッドで眠っている時間が増えてきました。そして、200mの予選で鵜沢飛羽選手が力走し、日本人で唯一準決勝に進出したのを見届けるかのように、奥さんに見守られながら、Mさんは静かに人生のゴールを迎えられました。


Mさん、奥さん、短い時間でしたが、いつも温かく私たちを迎えて下さりありがとうございました。Mさんの人として尊厳ある姿は金メダル級でした。


鵜沢飛羽選手、佐藤早也伽選手は、彼、彼女を応援するいろいろな人の想いを背負って、これからも力強く走り続けるでしょう!


がんばれニッポン!


2025年9月20日(土)

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