第371話 全自動 |
投稿:院長 |
身体が不自由な患者さんでも自宅で安心して生活するために、ご家族の献身的な介護が欠かせません。 80代の男性Iさんもその一人です。普段は奥さんと二人暮らしですが、時折、娘さんが自宅を訪問し介護を手伝ってくれています。 私たちがご自宅を訪問すると、Iさんはいつもソファーの定位置でくつろいでいますが、Iさんの頭のてっぺんから足の先までとてもきれいにケアされているのが一目でわかります。奥さんは、Iさんの身体の隅々まで知り尽くしているようです。 奥さん「先日、娘が来て耳の掃除をしてくれたんですよ」 Iさんの耳の穴を見てみると、確かにきれいで耳垢は全くありません。 私「そうすると、娘さんは上半身担当で奥さんが下半身担当なんですね!さすがに下(しも)のほうは、娘さんも恥ずかしいでしょうから」 奥さん(笑いながら)「あっちのほうは、昔お世話になったので大事に扱わなくちゃいけませんからね」 この言葉に皆で大爆笑。Iさんの奥さんはとても明るい方で会話が弾みます。 私「まるで全自動の丸洗い洗濯機のようですね。Iさんは座っているだけできれいになるんですね」 私「ところで夫婦喧嘩はするんですか?」 奥さん「はい、もちろんです。耳が遠くなってテレビの音がうるさいので静かにしてほしいです」 私「えっ、そうなんですね」 私「Iさん、奥さんの言うことに逆らわないほうがいいですよ。夜はテレビの音がうるさいと言われたら、静かに寝室に移動しましょう。下のほうを大事に扱ってもれなくなりますから」 Iさん(大笑いしながら)「はい、そうします」 どうやら夫婦円満の秘訣は、「耳が遠くなっても奥さんの声に耳を傾けること」、「下の世話を奥さんに任せておとなしくケアを受けること」のようです。 |
2025年2月28日(金) |
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