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 第341話 ヤクザと訪問診療パート2
投稿:院長

Kさんは神経難病のため全介助を必要とするようになり、奥さんの献身的な介護を受けている方です。

ある日、Kさんの指に小さな入れ墨があることに気が付き、奥さんに質問することになりました。

私「この小さな入れ墨は、Kさんが若い時に彫ったものですか?」

奥さん「そうなんです。この人は昔はヤクザになりたかったんですよ。どんなことにも動じない人でした」

Kさんの奥さんは、笑いながら教えて下さいました。

そういえば、この病気になってから、体が次第に不自由になっていく中でも、Kさんからけして弱音やネガティブな話を聞いたことがありません。

Kさんの昔の写真を見ると強面(コワモテ)で、サングラスをすると、本当にヤクザかと思わせるような近づきがたい顔つきなのですが、私の知っているKさんのイメージは笑顔しかありません。

私「Kさんの何にも動じない強い心が、この病気になっても見事に発揮されているんですね」

奥さん「そうかもしれませんね」

私「ヤクザになっていたら奥さんとは出会えなかったし、素晴らしい息子さんにも恵まれなかったと思うので、ヤクザにならなくて本当に良かったですね」

穏やかに目を閉じているKさんに語りかけました。

厳(イカ)つい顔つきの組員から低い声で「親分」と呼ばれるよりも、きれいな奥さんから優しい声で「お父さん」と呼ばれるような温か〜い家庭を築いたKさんの人間性が、今のKさんを支えています。


2024年4月10日(水)

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