第338話 人の魅力 |
投稿:院長 |
訪問診療を受けている患者さんの中には、高齢の独居男性もいます。 妻と死別したり、離婚したり、未婚だったり、その理由は様々ですが、いずれにしても医療や介護、生活の支援を必要とする方々です。 頑固な方が少なくはなく、他者の介入を極端に毛嫌いする人もいます。 「何しに来たんだ!」 「俺は誰にも頼んでいない!」 「さっさと帰れ!」 訪問するたびに罵声を浴びせられることもありますが、どんな場合でも根気強く対応していくことになります。 話を聞くと、訪問看護やヘルパーさんにも同じような態度だったりするのですが、このような態度をとる男性に対しても彼女たちの姿勢は不思議なほどに温かです。「どうしてだろう?」 診療を続けていくとその理由が次第にわかってくることになります。 厳しい口調の中に、患者さんが時折見せるユーモアや感謝の言葉がたまらないのです。この人間的な魅力を感じてしまうと放っておけなくなるのです。 最近、初診となったWさんは、奥さんと死別後に独居生活を送っていましたが、認知症が進んで通院が困難になり、県外で働いている息子さんから依頼があり、訪問診療を開始することになりました。 初めてWさんにお会いした時、開口一番、 「こんなに大勢でぞろぞろと何しに来たんだ!」 「契約解除だ!」 とすごい剣幕で怒られましたが、室内を見渡すと、若い頃にテニスで国体に出場した写真や、優しそうな奥さんの遺影が飾られてあったり、自宅にはWさんの魅力がたくさん詰まっていました。 訪問診療は、人の魅力を発見する旅。 いつか、Wさんから「契約解除は解除だ!」と言ってもらえるように、一生懸命にサポートしていきたいと思います。 |
2024年3月11日(月) |
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