第322話 織姫と彦星 |
投稿:院長 |
Tさんは、認知症があり、ご主人の献身的な介護を受けている女性です。 ご主人の介護日誌を拝見すると、血圧や体温の他、毎日の食事内容と食事量、尿の回数と時間、排便時間などがこと細かに記され、Tさんの普段の生活ぶりが一目瞭然です。特に食事量の欄には、完食したことを示す「完」の文字がず〜と並んでおり、この連続「完」の記録がいつまで続くのか楽しみにしていました。 ところが、Tさんは肺炎を発症し、かなり特殊な病気をお持ちなので、大事を取って総合病院に入院して治療を受けることになり、残念ながら、この記録が途絶えてしまうことになりました。 そして、先日、病院での治療で症状が改善し、無事に退院することになりました。 自宅に戻ってきたTさんを迎えたご主人のとっても嬉しそうな表情を見て、「織姫と再会した彦星のようですね!」と声をかけずにいられませんでした。 しかし、入院中は十分な食事ができなかったTさんの頚には中心静脈栄養の点滴の管が留置されたままでした。 私達は、ご主人の介護があれば、Tさんはきっと再び食事ができるようになると確信し、退院後は中心静脈栄養を行わずに様子を見ることにしました。 そして、退院直後は3分の一だった食事量が、次第に2分の一になり、ちょうどそのタイミングでTさんが点滴の管を自分で抜いてしまったので、結局、退院してからは一切の点滴を行っていません。 Tさんの表情は、すっかりいつもの様子に戻っており、この調子だと、介護日誌に再び「完」の文字が並ぶことでしょう。 しかし、彦星の織姫に対する愛情は永遠に完結することはありません。 私達は、天の神様の意志に逆らってでも、織姫と彦星が二度と離れ離れにならないよう、二人の絆を支えていくつもりです。 夫婦ってとっても良いものですね〜。 |
2023年9月23日(土) |
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