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 第317話 復活
投稿:院長

Hさんの自宅で診察していた時のことです。

Hさんの自室に、エンディングノート(自分の終末に際して、周囲に自分の希望などを書き記したノート)を見つけたことをきっかけに、いろいろと話をすることになり、その中でHさんがクリスチャンであることを初めて知りました。

そして、話をしている最中に、ある作家のことがHさんの表情と重なるようにして自分の脳裏に浮かびました。

それは三浦綾子さんです。

三浦綾子さんは、肺結核、脊椎カリエス、直腸癌、パーキンソン病など、度重なる病魔とと向き合いながら、1997年に亡くなるまで100冊以上の小説、自伝、エッセイを発表されました。

私は、大学生の頃に、三浦綾子さんの小説「塩狩峠」を読んで感銘を受け、大学の講義はそっちのけ?で、三浦さんの作品をむさぼるように読んだことを懐かしく思い出しました。

三浦綾子さんは、一つの作品の中で、運命、成長、貧困、差別、信仰、愛、友情、苦悩、葛藤、希望、憎悪、感謝、献身、信頼といった、今にも通じるような様々な人生のテーマを一つ一つ丁寧に深く掘りさげるように執筆されており、どの作品も深く心に沁みわたってくるような感動を覚えたことを今も忘れられません。

「塩狩峠」は、明治時代に自らの命を犠牲にして、鉄道事故で大勢の乗客の命を救った実在の青年をモデルにした長編小説で、青年が信仰を通して、自らの課題と向き合いながら純粋に成長していく姿が描かれています(小学校の国語の授業などでこの作品が取り上げられて、生徒が感動して泣き出してしまったというエピソードがあるくらいです)。

Hさんは、信仰する仲間との読書会で三浦綾子さんの作品を親しまれており、私のように信仰していない立場でも、Hさんがありのままの自分を受け入れて、11日を大切に純粋に生きている理由がわかった気がしました。

Hさんの姿に、ありし日の三浦綾子さんの面影を感じることができ(三浦綾子さんの表情は写真でしか拝見したことはないのですが・・・)、私の中で三浦綾子さんが“復活”したような不思議な感覚を味わうことができた1日でした。 


2023年7月31日(月)

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