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 第313話 キャリアウーマンの悩み
投稿:院長

Aさんは、90歳を過ぎていますが、記憶力はもちろん、お話も理路整然としていてとても頭脳明晰な方です。

さらに、Aさんは、過去にいくつかの大きな病気を患われたのですが、全て見事に克服されてきた忍耐力の持ち主でもあります。

それもそのはず、若い頃は、男性社会の中にあって、バリバリのキャリアウーマン(career woman)を貫き、女性の社会的な地位向上の道を切り開いてきた開拓者なのです!

それでありながら、誰に対してもとても気さくで、豊富な話題に事欠くことがなく、いつも楽しく和やかな雰囲気の中、診療をさせて頂いています。

そんなAさんにも悩みごとがあり、「齢も齢だし、体が思うように動かなくなってきたんですが、皆そんなふうに見てくれないんですよ」と笑いながら打ち明けられることが多くなってきました。

要介護認定を受けるには、介護認定調査というものがあり、市から派遣された調査員が患者さんの元を訪れて患者さん生活ぶりを確認したり、患者さん本人やご家族の話を聞いたりして、要介護度を判定する重要な事前資料を作成するのですが、Aさんの場合、調査員の前でも、昔のキャリアウーマンだった頃の面影を隠さずにいられないので、一向に要介護度が上がらず、介護保険で利用できる介護サービスが限られてしまうのです。

そんな私も、Aさんの要介護度が上がらないのは気の毒と思いつつ、「いつまでも元気なままでいてほしい、いつまでも要介護度が上がってほしくない」という気持ちもあるので、「90歳を過ぎても、要介護度が上がらないなんてとても喜ばしいことです!」とAさんを励ましています。

Aさんにはいつまでも、元気と人生の素晴らしいお手本を私達に運んで下さる「キャリーウーマン(carry woman)」であり続けてほしいと心から願っています。


2023年6月19日(月)

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